「同じ時代を精一杯、一緒に生きていきましょう」
Nissyがステージでこの言葉を投げかけたのは、2019年にソロ活動5周年を記念して開催された4大ドームツアー『Nissy Entertainment “5th Anniversary” BEST DOME TOUR』の東京公演だった。このときは、誰も予想しえなかっただろう。次にNissyがドームのステージに立つまで、約4年もの月日を費やさなくてはならない事態に見舞われることになるとは…。
同じ時代を精一杯、一緒に生きる。世界中が初めて経験するコロナ禍の中で、まさにあの日のNissyの言葉のように、ファンもNissy自身も同じ時代を懸命に生きてきた中で果たせた“再会”のドームツアーが、昨年10月から今年3月にかけて開催された『Nissy Entertainment 4th LIVE ~DOME TOUR~』。
NissyがMCで明かしたのは、「アルバムの歌詞が全然書けなかった」というコロナ禍で受けた精神的な苦悩だった。一方、その苦悩の中にあってもNissyが導き出した答えは「エンタメはそれでも必要だと思った」というアーティストとしての揺るぎない信念。双方の感情が渦巻く中で作り上げた最新アルバム『HOCUS POCUS 3』と、それを体現する今回のドームツアーは、奇しくも表現者としてのNissyにこれまでにはない新たな創造力を与えることとなった。
とりわけNissyらしいチャレンジを感じたのは、映像の使い方だ。通常では衣装やセットチェンジなどのライブの間をつなぐ役割として映像が差し込まれることが多い中、映像で紡がれるストーリーからつながる形でNissyがステージで歌い出し、映像×ステージを細かく融合させながらライブを展開するという、これまでにない演出で観客を物語の世界へといざなった。
これまでのライブと比べて、最新アルバムのナンバーではシンプルな色味の衣装が多く感じたのは偶然なのか意図的なものか、その真意はわからないが…。色彩を失った世界から、失われた希望を取り戻す――約3時間30分のライブを通して紡がれたのは、“再生への希望の物語”だ。
最新アルバムのダークな世界観から一転、約4年前のドームツアーから止まっていた時を一気に取り戻したのは『DANCE DANCE DANCE』。干支の動物の着ぐるみに扮したNissyが登場し、ダンスの振り付けをレクチャーする遊び心あふれた姿。そこから約5万人の観客も“演者”となって一緒に声を上げながら踊るさまは、約4年前と変わらぬ懐かしさと、コロナ禍を乗り越えて“この瞬間”にたどりついた喜びにあふれていた。
懐かしくも嬉しい再会といえば、セサミストリートとピーナッツの仲間達の存在も欠かせない。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンとのコラボレーションもまた、過去のドームツアーで盛り上がった名場面の1つだったが、今回のツアーでは大阪と東京公演に彼らが駆けつけてドームを華やかに盛り上げた。懐かしい演出でたどるライブの定番曲の数々は、失われた時間を確かに取り戻したという何よりもの証となった。