現役総理が襲撃されるという事件の裏で何が起きていたのか。昨年起きた安倍晋三・元首相の暗殺事件を彷彿とさせる凶行に誰もが危機感を募らせるなか、最も変わらなかったのが岸田文雄・首相その人だった。もっとも間近で見ている記者たちは、岸田首相の「鈍感力」に気づいたという。本誌・週刊ポストは覆面座談会を緊急開催。メンバーは政治部キャップクラスのベテラン記者A氏とB氏、第一線で取材する若手のC氏とD氏だ。【全3回の第2回。第1回から読む】
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司会(編集部):襲撃事件の翌日、ファーストレディの岸田裕子夫人が米国訪問に出発した。ジル・バイデン大統領夫人の招待とはいえ、首相夫人が“サミットの根回し”に訪米するなど前代未聞だ。
記者D:出発前に「夫のことは心配だけれども訪米することにしました」くらいのコメントが出されるかと思っていたけど、ありませんでしたね。裕子夫人は外交経験ほとんどゼロ。バイデン大統領来日時の夕食会で茶の湯の点前を披露したくらい。招待を受けて“どうして私ひとりで”と戸惑っていたのを岸田さんが“行け行け”と背中を押したそうです。だから出発前は相当緊張していたんだと思います。
記者C:外遊好きで知られたアッキー(安倍昭恵夫人)でも、ファーストレディとしてひとりで訪米したことはなかった。岸田さんとしては、対抗心で裕子夫人を派手に外交デビューさせたかったのではないですか。
記者B:夫の見栄(笑)。
記者D:裕子夫人は“家庭内野党”と言われたアッキーとは対照的に、地元を守る昔ながらの“政治家の妻”タイプで、選挙区を熱心に回っているとか。岸田派の議員は「地元では総理より人気がある」と言っていました。
記者A:どうなのかな。夫人は広島の三次市出身で、地元で造酒業や銀行業を営んでいた旧家のご令嬢。首相夫人となって初めての前回総選挙(2021年10月)の時には、その実家のある三次市(広島6区)に応援に入って大歓迎を受ける映像がニュースで流れたが、自民党候補は落選した。聞けば、大観衆が集まったのは動員をかけたからだとか。政治家の妻らしくないと言われたアッキーのほうが地元では票を持っているかもしれない。
記者B:それならなおのこと夫人を目立たせたいんじゃないか。岸田総理はソフトに見えても中身はすごく頑固で見栄っ張り。それに身内びいきが強い。安倍さんは“お友達人事”と批判されたが、実弟の岸信夫氏を大臣にはしなかった。岸氏が防衛大臣になったのは菅義偉内閣に代わってからだ。
しかし、岸田総理はあれだけ批判を浴びても長男の翔太郎氏を「適材適所」と言い張って総理秘書官に起用した。霞が関の官僚人事でも、岸田さんは自分が総理になれば義弟(妹の夫)の可部哲生・元国税庁長官を財務事務次官に起用するつもりだったとされる。しかし、2020年の総裁選で菅前首相に敗れたため、可部次官の芽はつぶれた。それでもブレーンの少ない岸田総理は今も可部氏を相談相手として頼っているそうだ。本当はファミリーしか信用していない。
記者D:ファミリーしか信用していないのはよくわかります。岸田さんが「聞く力」をアピールしているのは、周囲から“もっと人の意見を聞け”と忠告されたから戒めにしているわけで、もともと人の話をよく聞く人ではない。最側近といわれる木原誠二・官房副長官さえ、「総理は全然聞いてくれない。オレはもう知らない」とよく愚痴をこぼしています。
記者C:翔太郎氏は先日の総理のインド訪問に同行した時はさすがに「お土産」の買い物はしなかったようですが(笑)、最近は岸田さんのインスタグラムの動画につけられた〈チラッ〉〈はわわ〉〈ドキドキ〉といったテロップが“寒すぎる”と密かに話題です。総理はSNSでの情報発信を翔太郎氏に担当させると言っており、若者向けのPRのつもりでしょうが、記者の間では“税金で高額な秘書官給料もらって、している仕事がこれか”という声も。
(第3回につづく)
※週刊ポスト2023年5月5・12日号