現役総理が襲撃されるという事件の裏で何が起きていたのか。昨年起きた安倍晋三・元首相の暗殺事件を彷彿とさせる凶行に誰もが危機感を募らせるなか、最も変わらなかったのが岸田文雄・首相その人だった。もっとも間近で見ている記者たちは、岸田首相の「鈍感力」に気づいたという。本誌・週刊ポストは覆面座談会を緊急開催。メンバーは政治部キャップクラスのベテラン記者A氏とB氏、第一線で取材する若手のC氏とD氏だ。【全3回の第3回。第1回から読む】
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司会(編集部):安倍元首相には側近とまで呼ばれた記者や評論家が何人もいた。岸田首相には食い込んでいる記者はいるのか。
記者A:現役の記者が政治家に取り込まれてスポークスマンのようになるのは問題だが、政治家が信頼する記者の話に耳を傾けるのは、国民の関心や政策への評価といった最新の民意を汲み上げるひとつの手段でもある。歴代総理はメディアに人脈を持っていた。しかし、岸田総理にアドバイスしたり、腹を割って話せる記者がいるという話は聞いたことがない。
記者C:岸田さんは若い番記者にも、つきあいの長いベテラン記者にも同じ話しかしません。よく言えば公平な対応ですが、記者に壁をつくって誰も信用しないから何を聞いてものらりくらりで決して本音は言わない。
官邸内でも、総理が本当に信用しているのは翔太郎氏と身内同然の嶋田隆・総理秘書官くらいでしょう。
記者B:政策面でも総理が頼りにしているのはやっぱり身内。父方の従兄弟の宮沢洋一・参院議員です。宮沢氏が自民党税調会長として防衛増税のレールを敷き、岸田総理はそれに丸乗りした。総理のサプライズ人事といわれた植田和男・日銀総裁や稲葉延雄・NHK新会長(元日銀理事)の起用も、宮沢氏の助言とされている。
記者A:稲葉会長は宮沢氏の中学・高校の同級生、植田氏は宮沢氏の大蔵官僚時代に同省に出向していた経験があり、同時期に米国留学していた知己といわれる。総理自身はふたりとほとんど接点がなかったが、ノーマークの人物を起用して“総理主導”を印象づけたかったから、信頼する従兄弟の宮沢さんに勧められて飛びついたという。
いまや岸田政権の重要事項は嶋田秘書官と宮沢氏で決めているとさえいわれる。まさに岸田ファミリー政治だね。
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外交は素人の裕子夫人を前面に立て、政権の宣伝担当は長男・翔太郎氏がプロデュース、そして国民への増税など重要政策は従兄弟の宮沢氏が仕切る。この国の政治は岸田ファミリーに“私物化”されているかのようだ。
(了。第1回から読む)
※週刊ポスト2023年5月5・12日号