官房付は一時的な措置と見られており、今後の処遇は決まっていない。ただ省内では、荒井氏への“待望論”が沸き起こっているという。経済部記者は言う。
「首相秘書官になる直前まで、経産省で電機業界などを所管する商務情報政策局長を務めていた荒井氏は、半導体分野に精通していた人物だった。実は、世界最大の半導体メーカーである台湾積体電路製造(TSMC)の日本進出に一役買ったのが荒井氏だったのです。
日本企業は今、コロナや米中の貿易摩擦、ウクライナ戦争などの影響で半導体不足の危機に瀕している。そんな中、荒井氏がTSMCの日本誘致に成功したおかげで、半導体不足が解消されていくのではないかと言われています。
さらに、TSMCの工場が設立された熊本県菊陽町では、“半導体バブル”が起きている。同社の従業員と関連企業あわせて7000~8000人ほどが移住してくるため、大量の住居が必要となり、菊陽町と隣接する大津町を中心に、土地価格が2~3倍になったそうです。昨年からの地価上昇率はなんと、31%と全国トップを記録。飲食店やパチンコ店も移住者によって長蛇の列ができていて、地元の経営者たちは嬉しい悲鳴を上げているそうです。
この功績はいわば荒井氏が作ったもの。経産省内ではそんな荒井氏に、“本流”に戻ってきて力を発揮してほしいという声が上がっているのです。今年7月の省庁人事の際には、内閣府に行くか、経産省の亜流の部署に異動になるかもしれないと言われていますが、ほとぼりが冷めたら、荒井氏は本省のエリートコースに返り咲くと思います。経産省は他の省庁とは違い、一度出世レースから外れた人でも再チャンスを与える文化がありますから」
※週刊ポスト2023年5月5・12日号