歳を重ねると身体の様々な部位の不調に悩まされることが増える。それらの不調に打ち克つには、薬に頼るばかりではなく、自分で取り組める「セルフケア」も試してみる価値がある──。
もはや“国民病”とも言えるのが「高血圧」だ。2019年に改訂された「高血圧治療ガイドライン」の新基準では、75歳未満の人は上(収縮期)の血圧の降圧目標が130mmHg未満、75歳以降は140mmHg未満となり、日本人の半分以上が「高血圧」にあたるものと推定されている。健康診断などで基準値を超えて降圧剤の服用を始めると、服薬生活が長期に及ぶ可能性がある。
「高血圧の治療の基本は、生活習慣を改善することです」
そう指摘するのは、一般財団法人ライフ・プランニング・センター理事長で、日野原記念クリニックの久代登志男医師。久代医師が推奨するのが「タオルグリップ法」だ。
「血圧を下げるには運動療法なども推奨されますが、高齢になると足腰が弱り散歩も面倒になってしまう人が少なくない。毎日タオルを握るだけのタオルグリップ法なら、体に負担をかけることなく血圧を下げる効果が望めます。以前、この方法を4週間継続して行なった調査では、7人中6人で血圧の降下が確認できました」
タオルグリップ法は、カナダ・ゲルフ大学准教授のフィリップ・ミラー博士が考案した「ハンドグリップ法」を日本風にアレンジしたもの。
ハンドグリップ法は、「デジタル握力計を用いて最大握力の3割の力で2分握り、1分休む動作を左右2回ずつ行なう」というもので、高血圧改善の効果があることがわかり、高血圧の補完的な治療法として米国心臓協会も実践を考慮してもよいとしている。同協会の報告によると、上の血圧は平均13mmHg、下(拡張期)は平均7mmHg下がったという。
久代医師は、より身近な「フェイスタオル」を使うことを勧めている。
「フェイスタオルを握ることで前腕の筋肉が緊張して血管が圧迫され、血流量が減少します。反対に腕の力を緩めると、血管内皮細胞から血管を拡張して血流を促進する働きのある『一酸化窒素』(NO)が産生され、血流を促します。それにより降圧効果が望めるようです(別掲図)」(久代医師)
久代医師らはフェイスタオルでも握力計と同様の効果を得られることを確認している。タオルならデジタル握力計を用意するよりも手軽に試せるのが魅力だ。もちろん、薬による副作用の心配はいらない。