21万部を超えるベストセラーとなった坂東眞理子さんの『70歳のたしなみ』刊行から4年、書き下ろしの新章を加えた文庫版が5月2日に発売される。そこで昨年もっとも読まれた『80歳の壁』の著者で医師の和田秀樹さんと初対談が実現した。ともに年を重ねてますます活躍を続ける秘訣、長い後半生をどう生きるかについて、おふたりに語ってもらった。【前後編の後編。前編から読む】
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〈和田さんは著書『70歳が老化の分かれ道』の中で、《寿命が延びて、90歳、100歳まで生きるようなこれからの時代は、歳をとったので「引退する」という考え方自体が、老後生活のリスクになります》《自分が辞めると決めない限り、続けられるような仕事であるなら、身体がもつ限り、できる範囲で一生続けることが老化を遅らせるいい方法です》と綴っている〉
坂東:「女だから」と線引きする感覚と似ていますね。一般世論や平均値、「年寄り/女というものは」という型に押し込めようとする社会的な同調圧力を強く感じます。それに屈せず、“人は人、自分は自分”と抗わなければ。年を重ねたら自分で自分を励まさないといけませんね。
和田:意識してこれからの人生を楽しむなり、日々を充実させるべきで、その逆をやっていてはダメなんです。例えば、「終活」といった言葉があるじゃないですか。
坂東:終活は、本当に人の意欲をなくす言葉だと思いますね。
和田:そうなんです。死ぬことなんて考えないで、生きる時間をどう豊かにしていくかが大切なことなのに。
坂東:70代に入ると終活をしなければと考える人もいますが、人生100年時代、そこから20年も生きたらもう1回終活をしなくちゃならない。ほとんどの人が70歳を通過するこの時代、まずはその晩年意識を変えていかないと。70代ですべきは終活ではなく、その先の高齢期を生きるための準備、「老活」だと本にも書きました。
和田:終活は必要ないし、個人的には高い墓を買うのも疑問です。だって3代先に自分の墓を見てくれる人がいるとは、考えられないんです。
坂東:そう思いますよ。私も帰省すれば祖母の墓参りはしますが、その前の世代になるとわからない。
和田:少子化が進み、墓を守ってくれる人もいなくなる。終活として死んだ後の墓に何百万円も費やすよりも、いま生きている自分たちの幸せのためにお金を使って残りの人生を充実させる方がはるかにいい。母校に寄付するなど、人の思い出に残ることに使うのもいいと思います。いずれにせよ、先のために備えるよりもいまこの瞬間を味わうためにお金を使うべき。この瞬間に生きていることを本気で楽しむことが肝心です。
坂東:年を取ったからと他者に気を使わず、気ままに過ごすことを自分らしいリラックスした幸せな状況だと誤解するのも要注意です。心も体もたるんで、不活性老人まっしぐらになっちゃいます。