加齢と共にケアが必要になるのが「腎臓」だ。腰の背中側に左右1個ずつあり、血液をろ過して老廃物などを尿として体外へ排出させる役割を担う。その機能が衰えると、健康が大きく損なわれる。
高血圧や糖尿病といった生活習慣病などが原因となる「慢性腎臓病」を患う日本人は1330万人以上ともいわれる。自治医科大学抗加齢医学研究部教授の黒尾誠氏が解説する。
「腎臓は、『ネフロン』という組織の集合体です。ネフロンは血管と尿細管という二つの管からなり、血管からろ過した液体(ろ液)が尿細管を通って尿になる。このネフロンが約100万個集まった臓器が腎臓で、慢性腎臓病はネフロンの数が減っていく病気です。重度になると人工透析が必要ですが、そうした状態に陥っている人は34万人に及び、年1万人のペースで増えています」
ネフロンは老化によっても減少し、60~70代になると20代の人に比べて半分ほどになるという。
「そうした老化現象に糖尿病や高血圧が重なると、ネフロンの減少が加速します。腎機能低下が中程度まで進むと加速度的に悪化するので、早期に改善に取り組むことが重要。もちろん、糖尿病や高血圧の持病があるなら、その治療が慢性腎臓病の進行抑制につながります」
黒尾医師はそう説明したうえで、食生活の改善で腎機能の低下を防ぐことの重要性も強調する。
「注意すべきは『リン』です。リンの過剰摂取によって、ネフロン数の減少が加速するとわかってきました」
リンはカルシウムとともに骨を形成するが、過剰に摂取すると排出時にネフロンに大きな負担がかかる。「尿細管のなかでリンがカルシウムと結びついて結晶化すると尿細管を内側から傷つけて、ネフロンが死滅してしまう」(同前)のだという。
慢性腎臓病の進行を抑制するには、リンを含む食品添加物の摂取を抑えることが重要になるわけだ。主なポイントは別掲のリストに整理した。
「食品のラベルを見る習慣をつけましょう。『リン酸塩』『リン酸化合物』といった名前はわかりやすいですが、『かんすい』『酸味料』『乳化剤』『pH調整剤』『強化剤』といった食品添加物にもリンが含まれている可能性があります。
ただし、リンの摂取をゼロにするということではありません。リンの量は多くの場合、食事のタンパク質の量と比例します。リンを減らそうとするあまり、低タンパク質食になると栄養状態を悪くしてしまう。タンパク質は減らさずにリンだけを減らすには、リンを含む食品添加物を避けることが一番です」(黒尾医師)