叔従母から言われた「衝撃の一言」
ある夜は、港の見える丘公園で車を停めて、満点の星空の下で、港の夜景を見ながら話をした。
「このときはね、力士の頃の話やプロレスに入る前の話から始まったの。『子供が3人いる』とか『今はれっきとした独身であること』とか『プロレスもそんなに長く続けられない』とか『引退したらビジネスを手広くやっていく』とか、真剣な話を延々と聞かせてくれたんです。鈍感な私は『ふんふん』って聞いて『ああ、そうだったんですか』なんて呑気に言って、その日はそのまま帰ったんです」(田中敬子)
数日後、叔従母の大谷ユキエが自宅に姿を見せた。父の勝五郎の従妹であり、外交官志望の敬子に「スチュワーデスを辞めてから外交官になればいい」と背中を押した人物であることはすでに述べた。
ユキエは開口一番「あなた、力道山と付き合ってるって本当?」と訊いた。
「付き合っているっていうか、時々会ってお食事したり、お話ししたりするくらいなもんよ」
「お話しって、一体どんな話をしてるっていうのよ」
ユキエに質されて、敬子は数日前の長話を打ち明けた。すると、ユキエは「えーっ」と声をあげた。
「どうしたの?」
ユキエはこう言い放った。
「あなた、それプロポーズされてるのよ!」
(次回最終回)