SDGs(持続可能な開発目標)とは、「貧困」「教育」「ジェンダー」「エネルギー」「経済成長と雇用」「不平等」「平和」など17のゴールと169のターゲットから構成される、2030年までによりよい世界を目指す国際目標のことだ。SDGsという言葉と、なんとなくの内容は広まったが、どこか他人事という雰囲気が根強い。もっと身近な問題として考えてもらおうと、日常の足として利用されている複数の鉄道会社がSDGsトレインを運行している。ライターの小川裕夫氏が、東急、阪急、阪神と会社の垣根を超えて広がっている背景についてレポートする。
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2023年4月17日、東急電鉄(東急)はリニューアルしたSDGsトレインを神奈川県川崎市にある元住吉検車区で報道公開した。新たな列車は翌日から運行を開始している。
SDGsトレインは、東急グループや参画する企業・自治体・団体の具体的な取り組みを発信する列車として2020年9月に運行を開始。車内には、理念に賛同する企業からのメッセージを掲出。車内は展示会のような雰囲気になった。さらに車体はカラフルな17色のグラデーションのラッピング電車となり、これは課題解決に取り組むパートナーシップ強化などの意図が込められている。
阪急電鉄・阪神電鉄から東急へ
東急がSDGsトレインの運行を開始してから約2年半が経過したわけだが、その間にSDGsの概念は社会に広く浸透。東急が周知に一定の役割を果たしたことは間違いないが、SDGsそのものは東急の専売特許ではない。
また、東急の広報CS課の担当者が「東急の発案ではありません。阪急電鉄・阪神電鉄から声をかけていただいことがきっかけになり、東急でも運行が始まりました」と認めているように、東急が発案したものではない。
先駆けでもある阪急電鉄(阪急)と阪神電気鉄道(阪神)は、2019年5月からSDGsトレインの運行を開始している。阪急阪神ホールディングス広報部の担当者は、こう説明する。
「阪急と阪神は2019年5月からSDGsトレインの運行を開始し、2020年5月に運行を終了する予定にしていました。というのも、阪急阪神HDが取り組んでいた“未来のゆめ・まちプロジェクト”が10周年を迎える記念として運行したからです。ところが、実際に運行を開始すると国・国連・企業・利用者といった多くの方々から反響をいただきました。そうした反響を踏まえ、運行期間を延長することにしたのです」
阪急・阪神は運行期間の延長を決めたが、その流れで東急電鉄と協業することが決まった。そのため、2020年9月からはSDGsトレイン2020と名称を改めることになった。