有名人による「いじめ被害体験」の告白は、かつてもたびたび行われてきた。その多くは、若い女性アイドルや女性タレントによるものが多かったように思うが、最近は中年男性による告白が増えており、それに勇気づけられたのか、一般の中年による被害告白と救済を訴える動きが出ているという。ライターの森鷹久氏が、過去のいじめ加害によって一般の中年が追いつめられ疲弊する様子ついてレポートする。
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いじめた方は覚えていないが、いじめを受けた方は一生忘れることはない──
最近、かつて「いじめ」の被害に遭った人々が、SNSなどで「告発」をするパターンが増えている。人気お笑い芸人「ジャングルポケット」の斉藤慎二さんによる「いじめ体験」の告白は、テレビや新聞でも大々的に取り上げられ、かつて自身をいじめていた人物から「俺の名前を出さないで」と連絡が来たことも明かしている。お笑い芸人「ライセンス」の藤原一裕さんや、なだぎ武さんもやはり「いじめ体験」をメディアや講演で赤裸々に告白。「よく言った」という意見が多数寄せられ、いじめ被害者達からも賞賛の声が上がっているようだ。そしてこの流れは有名人だけでなく、一般人にも波及しつつあるのかもしれない。
「息子が幼稚園から帰ってくるなり、パパはいじめっ子だったのかと聞かれました。何のことか理解できず、そんなことないよ、やさしいパパだよと言ったんですが、息子の目には涙が溜まっていました」(本田さん)
声を震わせながら筆者の取材に応じたのは、埼玉県在住の主婦・本田かえでさん(仮名・30代)。夫の実家近くにマンションを購入した本田さんは現在、夫と幼稚園に通う息子と三人で暮らしている。幼稚園で仲良くなった息子の友人の親には、夫と小学校や中学校が一緒だった同窓生もいるという。息子は、そんな親の誰かから「パパはいじめっ子だ」と吹き込まれたようだった。
「夫が帰ってからも、息子は怒って黙ったまま、夫もうろたえていました。昔誰かをいじめていたのか、と夫に聞いても、そんなこと覚えていない、の一点張り。結局その後、夫と小中学校が一緒だったXさんというママが、息子にそう話したことが発覚しました」(本田さん)
息子の機嫌は一向に回復する兆しがない。それだけショックだったのだろうと感じ、ほかに手段が思いつかなかった本田さんは、思い切って幼稚園に相談したという。すると、この「いじめ問題」は園内ですでにちょっとした「騒動」になっていたらしく、応じたのは園長だった。