本来は健康にいいはずの食材でも、食べ方を間違うと、逆効果になってしまうこともあるという。たとえば、牛や豚のヒレ肉などに代表される赤身肉はカロリーが低く、ダイエット効果もあるといわれるが、飽和脂肪酸を含むため、食べすぎると動脈硬化や心筋梗塞などのリスクを高める。
一方、肉の摂取量が少なすぎると脳卒中のリスクが上がるという側面もある。日本人は心筋梗塞よりも脳卒中で亡くなる人が多く、特に高齢者はたんぱく質の摂取量が不足しがちだ。新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんが言う。
「肉に高熱を加えると発がん性物質が形成されてしまうので、焦がすような焼き方はNG。おすすめは焼き肉ではなく、しゃぶしゃぶです」(岡田さん)
ただし、豚肉は例外だ。しゃぶしゃぶにすると余分な油を落とすことができ、動脈硬化などの予防にもつながるが、豚肉に豊富なビタミンB1も流れてしまう。豚肉の場合はしょうが焼きがベター。とはいえ、豚肉など肉に含まれる油脂は悪玉コレステロール値の上昇につながる飽和脂肪酸。食べすぎには気をつけたい。
一方、魚の油分には悪玉コレステロールを減らしてくれる不飽和脂肪酸のDHAやEPAが豊富だ。特に青魚に多く、日本人が大好きなまぐろにもたっぷり含まれている。だが、管理栄養士の安中千絵さんは注意を促す。
「まぐろのような大型回遊魚は、神経発達障害や認知機能の低下、心血管疾患などを招くとされるメチル水銀の含有量が多い。昨今はマイクロプラスチックの問題もあるので、過剰摂取は避けて。
また、青魚にはDHAやEPAが豊富ですが、魚の油がすべて体にいいわけではなく、生活習慣病リスクを上げるのは肉の油と同じです。いずれにせよ、摂りすぎはよくありません」
魚をメインにした和食はヘルシーだというのが常識のようにとらえられているものの、焼き魚や漬けものには塩分が多く、日本人に高血圧が多い原因のひとつになっていることも忘れてはならない。
アマニ油やえごま油など、青魚に含まれるDHAやEPAなどと同じオメガ3系に属し、「健康にいい」とされている油にも注意が必要だ。
「たしかに善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロール値だけを低下させるので血流をよくし、認知症予防やアレルギー抑制にも効果があるといわれています。ただし、サラダなどに生でかけて食べるのはいいのですが、 加熱調理に使ってしまうとかえって老化を促進してしまう可能性が高くなります。オメガ3系の油は酸化しやすく、熱を加えると質の悪い油に変質してしまうのがその理由です。
加熱しない料理にはアマニ油やえごま油、加熱する料理にはオリーブオイルや米油というように、上手に使い分けましょう」(管理栄養士の望月理恵子さん)