細田議長、危うし
●「安倍派元会長」「会長代理」の自民大物が続々落選も
自民党の大物、長老議員も思わぬ苦戦に陥りそうだ。衆院議長の細田博之氏(元安倍派会長)は「保守王国」の島根(1区)で11回連続当選してきたが、旧統一教会との密接な関係を何度も釈明に追い込まれ、次は大接戦が予想される。
安倍派では長老で会長代理の塩谷立氏(静岡8区)も当選圏は厳しい情勢。旧統一教会と関係がある「日韓海底トンネル推進議員連盟」の会長を務めたことが批判された元衆院副議長の衛藤征士郎氏(大分2区)も劣勢が予想される。
「政治とカネ」が批判されて前回は選挙区で敗れた甘利明・前幹事長は、定数是正で新設される神奈川新20区からの出馬を予定しているが、「有権者の視線は依然厳しい。新たな選挙区でも支持を取り付けるのは簡単ではない」(野上氏)と当選圏内は難しそうだ。
●「石原家」「岸家」は“議席断絶”の可能性
政界の名門出身の世襲議員は明暗を分けそうだ。
「総裁候補」の河野太郎・消費者相(神奈川新15区)や小泉進次郎・元環境相(神奈川新11区)は地盤が安定している一方、東京新8区で再起をめざす石原伸晃・元幹事長は区割り変更で地盤の一部を失い、連続落選の危機。実弟の石原宏高氏(東京新3区)も劣勢の見通し。
「東京ブロックは比例定数が増えるが、それでも自民は東京で比例の議席も減らすと予想され、小選挙区で敗れると比例復活のハードルが高くなる」(野上氏)
石原家は兄弟そろって議席を失うピンチだ。
4月の衆院山口2区補選で当選したばかりの岸信千世氏は、定数削減で次の総選挙には山口新2区からの出馬が有力だ。しかし、曽祖父の岸信介元総理、父の岸信夫・前防衛相以来の地盤を継いだにもかかわらず、補選では世襲批判を浴びて思わぬ苦戦を強いられた。
「山口2区補選の投票率は約42%と低かった。次の総選挙が前回並み(55.93%)の投票率になれば信千世氏の当選は危うくなる」(野上氏)
岸家の議席も風前の灯火のようだ。
選挙情勢分析/野上忠興(政治ジャーナリスト)
※週刊ポスト2023年5月19日号