俳優として『3年B組金八先生』(TBS系)、『101回目のプロポーズ』(フジテレビ系)など、多くの人の記憶に残るドラマや映画に出演してきた武田鉄矢さん。1999年、約20年かけて運転免許を取得した自身の経験をもとに、『教習所物語』(TBS系)では鬼教官とバトルする、免許取り消しになった中年教習生役を演じたこともある。
近年は高齢者ドライバーが引き起こす交通事故が社会問題化している。今年も春の全国交通安全運動が始まった。5月11日から20日まで行われる予定で、最終日にあたる20日は「交通事故死ゼロを目指す日」となっている。NEWSポストセブンは、74歳となった武田鉄矢さんに、「高齢者の運転免許の返納」について聞いてみた。
「あれだけニュースに煽られると、自分も免許を返納する域に入りましたので、考えるんですよね。世の中や若い人が年寄りに免許を返納しろと迫ってきます。
どうしようかと考える中で、精神科医の和田秀樹先生の著書『老人入門 いまさら聞けない必須知識20講』に“うっかり免許は手放さないほうがいい”と書いてあったんです。よく読んでみると、『アクセルとブレーキを踏み間違えると死ぬぞ』という危機をいつも持って運転しているほうがボケないそうです」
1996年3月、当時46歳だった武田さんは自身の所有する別荘が鹿児島県・種子島にあることから「行きたい場所に行けるように」と、島の自動車学校を経て、20年かけて運転免許を取得したという。
「今も車は本屋やゴルフの打ちっぱなしへ行くときに運転しています。先日、お世話になっているディーラーの方に『免許を手放そうかという気持ちが頭をかすめるんだけど、まだ車が便利でね』と打ち明けると、『うちの(高齢の)親は免許を返納して半年くらいから具合が悪くなった』と、話していました。免許を手放すのか、ハンドルを握り続けるのか、正解は1つじゃないみたいですね」
ドライバー歴28年の武田さんは、「年寄りだからって、許されることは一つもない」と語る。
「年に甘えちゃいけないんですよ。この年になって戒めの言葉としています。でも、メディアも含めて、いつも答えを1つに絞るじゃないですか。正しいということは1つではなくて、年を取るということも答えを1つに絞らないほうがいい。
今はそんな境地で生きています。ただ、合気道へ行くときは、さすがに車はもう止めました。道場の仲間を見ていると、同年代の皆さんが自転車などで来てらっしゃるんですね。考えてみると、車に乗って修行に行くってのもおかしいですからね(笑)」
取材/中野裕子(ジャーナリスト) 撮影/山口比佐夫