大相撲5月場所が5月14日に初日を迎える。1横綱1大関という“番付崩壊”の危機もあって、関脇が4人という番付になっている。関脇の筆頭は先場所初優勝を飾った霧馬山である。1月場所は11勝4敗、優勝した3月場所は12勝3敗で、大関昇進の目安とされる3場所33勝にあと10勝という状況だ。
今場所は“霧馬山の大関取り”が注目を集めているが、若手親方のひとりはこう言う。
「関脇4人に小結3人という番付にしているのは、三役を増やせば大関昇進の目安となる“三役として直前3場所が33勝”に該当する可能性のある力士が増えるという、協会側の計算がある。霧馬山ばかり注目されているが、先の3月場所も三役で2ケタ勝ったのは霧馬山に加え、豊昇龍(10勝)、大栄翔(12勝)、若元春(11勝)と4人いた。このうち豊昇龍は三役2場所で18勝、若元春が同20勝となっている。実は3人が大関昇進の可能性があるという状況です。
協会はもはや大関昇進に際して“三役で33勝”にこだわっていないでしょう。あくまでも目安に過ぎず、直前の3場所が安定した成績と言えそうであれば、ハードルをかなり下げるのではないか。もちろん、霧馬山が大関に一番近いことには違いありませんが」
モンゴル出身力士で賜杯を抱いた9人目の力士となる霧馬山は、稽古熱心で知られているという。相撲担当記者が解説する。
「2019年に井筒部屋が閉鎖されたことに伴い、霧馬山が所属する陸奥部屋に横綱・鶴竜(現・鶴竜親方)が移籍してきたことで、相撲への取り組み方が変わった。もともと鶴竜が所属していた井筒部屋は力士が2~3人しかいなかったが、そのなかでも時津風部屋への出稽古で熱心に鍛えたのだという話を聞き、霧馬山も出稽古に目覚めたといいます。
陸奥部屋は国技館に近い両国に部屋を構えており、近場に相撲部屋が多くある。そうしたなかでも1月場所後には、苦手とする関取が多い埼玉・草加にある追手風部屋に5回以上通っていました。モンゴル人特有の足腰の良さもあって、急速に力を伸ばしました。モンゴル出身力士の中心的存在となって、日本人力士たちの“壁”となっている。
今場所は幕内上位にモンゴル出身力士が少なく、横綱の照ノ富士と関脇の豊昇龍だけ。4場所連続休場中の照ノ富士が出場したとしても自分の相撲で精一杯。豊昇龍も大関昇進がかかっている。同郷の力士たちも必死ななかで、どう結果を残せるかが注目です」