ライフ

ストレス対処に有用な“首尾一貫感覚” 「だいたいわかった」「なんとかなる」「意味がある」で心は支えられる

現代社会におけるストレス対処法とは(イメージ)

現代社会におけるストレス対処法とは(イメージ)

 新型コロナ禍や世界各地での戦争、さらに物価の上昇などが、私たちの日常生活だけでなく、心の中にも暗い影を落としている。ますます生きにくい世の中になったと感じる人が増えているのではないだろうか。小手先のストレスマネジメントだけでは通用しなくなったこの時代を、少しでも有意義に生きていくにはどうすればいいのか? そのヒントの一つは、戦争や災害などの過酷な環境を乗り越えた人たちの経験にある──。先の大戦でストレスフルな環境を生き抜いた人たちの“対処力”に着目した研究が、いま再び注目を集めている。近著に『過酷な環境でもなお「強い心」を保てた人たちに学ぶ 「首尾一貫感覚」で逆境に強い自分をつくる方法』があるストレスマネジメント専門家の舟木彩乃氏が、メンタル強化術を解説する。

 * * *
 第二次世界大戦時に、ナチスドイツの強制収容所に収容されながらも生き延びて、健康を維持したまま天寿をまっとうしたユダヤ人女性たちがいます。戦後、彼女らが共通して持っていた考え方や思考は、ユダヤ系アメリカ人研究者によって「首尾一貫感覚(Sense of Coherence)」と名付けられました。「ストレス対処力」や「健康に生きる力」などと呼ばれることもあります。

 首尾一貫感覚は、次のような3つの感覚からなっています。

【1】把握可能感(だいたいわかった)──自分の置かれている状況や今後の展開を把握できると思うこと
【2】処理可能感(なんとかなる)──自分に降りかかるストレスや障害に対処できると思うこと
【3】有意味感(どんなことにも意味がある)──自分の人生や自身に起こることにはすべて意味があると思うこと

「首尾一貫感覚」が高い人とは具体的にどのような人なのか。それは伝記やノンフィクションからも読み取ることができます。

 その恰好のテキストは、ユダヤ人強制収容所の様子を書いたヴィクトール・E・フランクル(1905~1997)の『夜と霧』(池田香代子訳、みすず書房)です。

 被収容者であったフランクル氏は、精神科医であり、また心理学者でもありました。それゆえ、被収容者たちがどのようにして精神を崩壊させていったのか、あるいは逆に、過酷な状況に対峙し精神を保っていたのか、心理学や精神医学の立場から分析し、著作などを通じて後世に残すことができたのです。

 首尾一貫感覚は、もともとユダヤ人強制収容所を生き抜き、その後も明るく生きた女性たちへのインタビューを契機に生み出された概念ですが、これを分析した医療社会学者は、フランクル氏の研究からも「影響を受けた」と著書に書いています(アーロン・アントノフスキー著『健康の謎を解く―ストレス対処と健康保持のメカニズム』山崎喜比古・吉井清子監訳、有信堂高文社、23頁)。

 したがって、フランクル氏が心理学者として被収容者の様子を描写した内容は、首尾一貫感覚を理解するための有益なテキストだということができます。

関連記事

トピックス

高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
福地紘人容疑者(共同通信社)
《“闇バイト”連続強盗》「処世術やカリスマ性」でトップ1%の “エリート模範囚” に…元服役囚が明かす指示役・福地紘人容疑者(26)の服役少年時代「タイマン張ったら死んじゃった」
NEWSポストセブン
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン