自分の顔を鏡でまともに見たことがなかった
大谷翔平選手に羽生結弦さん。スキンケアのイメージキャラクターに男性が起用されるようになっている。男性の美容系ユーチューバーが活躍するなど、メンズコスメ市場は拡大傾向にあるが、「ハードルが高い」とか「必要ない」と感じている男性は、いまだ少なくないのではないか。実際、基礎化粧品市場全体のうち、男性用が占める割合は全体の2割程度だ(株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー調べ)。スキンケアは人をどう変えるのか? ここに、スキンケアによって「人生が変わった」と語る男性がいる。
会社員をしながらライターをしている伊藤聡さん。スキンケアとは無縁の人生を送っていた50代の伊藤さんがスキンケアを始めたきっかけは、電車の窓に映る自分の姿に驚愕したことだった。そこには、コロナ禍の中、不摂生な生活によってくたびれ果てた自らの顔が映っていた。やむにやまれぬ気持ちでスキンケアに手を伸ばし、新しい自分と出会っていく過程を、『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました。』(平凡社)に綴った。
伊藤さんはスキンケアに目覚めるまで、自分の顔を鏡でまともに見たことがなかったという。
「そういう男性、けっこう多いと思います。顔を洗った後やひげをそった後、チラッと鏡で確認する程度でした。そもそも自分の体を気にしたり、体調を考えたりすることがなかったんですよね。スキンケアの本を通して僕が伝えたかったのは、男性にも、できればもう少し自分の体を気にしてほしいな、ということです」(伊藤さん、以下「」同)
男性も女性もいろいろだが、<男たるもの、容姿など気にせず放っておくというのが正しい態度>(同書より)に賛同する男性は少なくないのではないか。そうやって長らく放っておいたからこそ、伊藤さんが初めて「化粧水+乳液+美容液」を使うと、翌日から明確な変化があった。
<肌はもちもちと柔らかく、ふっくらとした感触になっていることに驚いた>。かくしてスキンケアの深い沼にはまっていくことになる。