放課後、飽きるまで遊びまわった小学生の頃、好きな男の子を教え合った学生時代、自分で稼いだお金で一緒に旅行した働き始めたばかりの頃……人生のステージが変わっても友達と過ごす時間はかけがえのないもの。しかし、年を重ねて友人との関係を深める人がいる一方、友達がひとり、またひとりと減ってしまう人もいる。
「コミュニティーセンターの手芸教室で知り合った同世代の女性でLINEグループを作ったんです。仲よくなるためにもっと自分を知ってもらおうと、自分で作った作品だけじゃなくて、旅行に行ったときや孫が来てくれたときに写真を撮ってアップしていたら、最初は多くの人が返信してくれたけど、次第に反応が薄くなり既読スルーが増えて……。なんだか急に居心地が悪くなって、しばらくしてグループを退会しました。以来、教室にも気まずくて顔を出していません」(60代主婦)
『定年ちいぱっぱ』などの著書があるエッセイストの小川有里さんは、友達作りにおいて一方的な発信はご法度だと語る。
「芸能人ならまだしも、一般人の生活報告はたとえ友達であっても積極的に見たいという人はほとんどいないと思います。以前、電車のなかでスマホで孫の写真を延々と見せ続けるお年寄りを見かけましたが、一緒にいた人は途中から寝たふりを始めました。つまらなかったんでしょうね」
友人関係は「精神的なギブ&テイク」が基本と小川さんは言う。
「モノやお金のことではありません。この人はプラス思考だから話していて元気になる、この人は物知りでいろいろ教えてくれる、など互いに与え合うものがないと人間関係は続きません。愚痴や悪口が多かったりネガティブ思考だったりすれば、周囲の人は離れていきます。
距離感を詰めすぎるのもNG。少し親しくなると『あなたの家をグーグルのストリートビューで見ちゃった』と詮索したり、プライベートに踏み込んでくる人もいると聞きますが、やっぱり嫌われます」
そうした失敗の多くは、「誰もが自分と同じ境遇にいる」「自分がしてほしいことは相手も同じはずだ」という思い込みに基づくもの。埼玉県の70代女性がため息をつく。
「コロナが明けて通い始めたヨガ教室で同世代の生徒と意気投合し、お茶をする仲に。親しくなれたと思ってつい自分の夫の愚痴を言ったら、彼女の顔色がサッと変わって、『いるだけいいじゃない』と冷たく言われました。どうも彼女は最近旦那さんに先立たれたようで、そこから関係がギクシャクするようになり、結局会わなくなってしまいました」