不要ながん検査は腫瘍マーカーに限らない。村上さんは30代以下であればマンモグラフィー検査は、受ける必要がないと続ける。
「曾祖母、叔母など自分から3世代以内の親族に乳がん患者が数人いるなど、遺伝性の乳がんが疑われる場合を除いては不要です。
というのも、20代前半で乳がんになる人は10万人に1人、30代後半で1600人に1人。30代以下の確率なら検査で見つかることは珍しいし、日本人には乳腺の密度が高い高濃度乳腺が多く、がんではないのにがんと疑われる『偽陽性』の診断を受けやすい。特に若い人は乳腺が発達しているのでより偽陽性になりやすいのです。乳がんではないのに要精密検査となれば、精神的な負担が大きく、お金もかかります」(村上さん)
検査を受け、病気を見つけるメリットと、検査や治療に伴う負担を天秤にかけ、適切なメニューだけを受けるように心がけたい。常磐病院の乳腺外科医、尾崎章彦さんは人間ドックの定番メニューである「脳ドック」は後者が大きいと指摘する。
「日本では脳の動脈瘤を見つける脳ドックが流行っていますが、世界的にはあまり行われていません。というのも、ただちに治療を要する動脈瘤が見つかるケースが少ないこともあり、検査の意義が確立されていないからです。加えて、治療が必要な場合、手術やカテーテル治療による合併症や事故のリスクがあります」
近年、医学の進歩とともに未来の病気リスクが予測できる「遺伝子検査」も研究開発が進んでいる。しかし谷本さんは信頼しすぎると災いを招きかねないと指摘する。
「まだなっていないのに、『がんになるリスクが○倍』などの結果が出たとしても、現状は対処が難しいことが多い。結果を深刻に受け止めすぎなければいいのですが、不安をあおられる可能性もあり、安易に調べるのはやめた方がいいでしょう」(谷本さん)
※女性セブン2023年5月25日号