二刀流で大活躍するエンゼルス・大谷翔平(28)。今シーズンは序盤から「投手・大谷」の活躍が際立っている。特に“決め球”の精度が高く奪三振数、奪三振率ともア・リーグ随一の成績を誇っている。大谷が三振を奪う最大の武器にしている球種が「スイーパー」だ。野球ジャーナリストの広尾晃氏が語る。
「大谷が投げるキレッキレの“魔球”として話題ですが、そもそもはスライダーの一種。通常より横に大きく変化するスライダーをスイーパーと呼びます。メジャーでも昔からある呼び名ですが、昨季あたりから大谷を中心にスイーパーを投げる投手が急増してトレンドになっている。WBC決勝の9回2死、エンゼルスの同僚であるマイク・トラウト(31)を空振り三振に仕留めたのも140キロのスイーパーでした」
今季の大谷はスイーパーを投げる割合が昨季より明らかに増えている。
メジャーのデータ分析サイトによると、大谷はメジャーで最もスイーパーを投げる投手のひとりで、特に今シーズンは全投球のうち半数近くがスイーパーだという。
その変化は結果につながっているが、一方で気になる点もあるという。
「一般にスライダーはピッチング時にねじりを加えるので、肘や肩に負担が大きいと言われます。大谷は二刀流で連続出場を続けているだけに、疲労とともにスイーパーの多投が故障につながらないか心配です」(広尾氏)
投手としてロッテや巨人、中日でプレーし、マイナー経験もある前田幸長氏はこう語る。
「大谷はテイクバックを小さく取るフォームなので、元々肘や肩にそれほど大きな負担はかかっていないはずです。それに縦スライダーよりもスイーパーのほうが今の投球フォームにマッチした変化球に見えます。変化球は体に『合う』『合わない』があり、大谷の場合は問題ないのでないか」
今後も安心して奪三振ショーを楽しみたいと、すべてのファンが願っている。
※週刊ポスト2023年5月26日号