秋葉原

秋葉原にはさまざまな人間が集まる

 彼女たちのミニスカの下は100%生足で、必ずひとり。その足取りに迷いはない。時々不安そうに手にしたスマホをのぞく女の子もいるけど、ほとんどは無表情だ。いったい彼女たちはその安ホテルで何をしているの?

『東京女子サバイバル・ライフ 大不況を生き延びる女たち』の著者・酒井あゆみさんと話していたときに聞いたら、たったひと言、「売り」。

「いますぐお金が欲しい女の子のためのウェブサイトがあるのよ」と言う。「靴の裏底がパカパカに抜けている女の子を見かけたんだけど、彼女はいったい何?」と聞いたら、「家出っ子だね」だって。

「いま、母親が再婚か再々婚かの女の子で、義父から性的虐待を受けている子の数がハンパないのよ。そのつらい現実から逃げて、東京で売りをしてんだよ」と言うんだわ。

「女子高生が体を売っても、ピンハネされて手元に残るのは5000円あればいい方。その値段もどんどん下がっているのよ」とも。

 それから数日後のこと。

 秋葉原駅に近いファミレスにご飯を食べに行ったら、隣の席に40代とおぼしき男と女子高生が無言でスパゲティを食べていたの。ところどころ擦り切れているジャンパーを着て、もっと古びた黒いリュックをソファに投げ出している男は、どう見ても彼女の父親ではない。

「ケーキ、食べようかな」。女の子は顔に似合わない低い声で言うと、男は聞こえないフリ。それで女の子は「ケーキ」とだけ言って、注文用のタブレットを取ろうとしたら、男は「その分は自分で払えよ」だって。

 2人はお金だけの関係を何度か続けてきて、だから男は女の子をサイゼリヤに誘ったと私は見たね。お互いに納得ずく。私がどうこう口をはさむことじゃない。わかっているけど、この切なさはなんなんだろう。

 約30年前、女子高生ブームがあって、高校生が身に着けたものはショーツでもブラジャーでも高値で売れた。

 それで思い出すことがある。年頃の女の子を持つ母親だった友達は、「娘のショーツが何枚もなくなっている」と電話でぼやいたの。「それ、まずいんじゃね?」と言ったら、「見当はついているんだけど、手元を見ていないから騒げないのよ」と言う。彼女は近所の変質者が物干しから娘のショーツ泥棒をしていると思いこんでいたのよ。

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