現実世界には存在するはずのない本
科学の力によって「もうひとりの私」が現実のものになろうとしている現代において、実際に「パラレルワールドに行った」とされる体験談や目撃情報は多数存在する。
辛酸さんも出張で兵庫・姫路に行った際、滞在先のビジネスホテルで、それに近い不思議な体験をしたと振り返る。
「朝食をとりに食堂に行ったら新聞の朝刊が置いてあり、自由に持ち帰っていいということだったので、部屋で読んでいたんです。そこにはホーキング博士とイーロン・マスク氏がAIの危険性に関する新刊を出すという広告が載っていました。その新聞は部屋に置いたままホテルをチェックアウトして、後で本について調べたら、そんな内容の本は存在していなかった。
もしかすると一瞬パラレルワールドに行って、そっちの世界で出版される本の広告を見てしまったのかも、と思いました」
これを辛酸さんの“記憶違い”と決めつけることはできない。世界には「マンデラ・エフェクト(マンデラ効果)」と称される、似たような現象が数多く報告されているからだ。これは、当時存命していた南アフリカの指導者ネルソン・マンデラ氏について、1980年代に獄中で死亡していたという記憶を持つ人が世界各地に大勢現れたという不思議な現象に由来する。
誤った記憶の情報源は一切存在しないにもかかわらず、記憶の確かさや信憑性が確認されているといい、「事実とは異なる記憶を不特定多数の人が共有する」ことを、マンデラ・エフェクトと称するようになった。
「日本でも、炭酸飲料『ファンタ』のゴールデンアップル味が、実際には存在していなかったにもかかわらず“飲んだことがある”“CMを見ていた”と並行世界で経験したと思われるような記憶を持つ人や、『キットカット(Kit Kat)』のロゴにハイフンがあった(Kit-Kat)はずだと主張する人が複数現れています。もしかすると本人も周囲も移動したことに気づいていないだけで、パラレルワールドから来た人が、この世界にも入り交じっているのかもしれません」(辛酸さん・以下同)
ひょっとしたら、いまあなたが生きているこの世界も、実はパラレルワールドかもしれない。
「コロナ禍で世の中が大きく変わっていったときに頭をよぎったのは、『もしかして世界全体で、悪いパラレルワールドに来てしまったのではないか』ということでした。スピリチュアルの世界では、自分の意識を変えることで、いま生きている世界を自分の望んだパラレルワールドに変えられるという考え方もある。どうせなら、いいパラレルワールドに行きたいですよね」