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エンタメ界を席巻する「パラレルワールド」 海洋研究、量子力学、辛酸なめ子氏の“体験”から存在の可能性を探る

映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

ドラマ『大奥』からアカデミー賞を受賞した映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』まで世界各国でパラレルワールドをテーマにした作品が花盛り

 アカデミー賞7冠に加え主演のミシェル・ヨー(60才)がアジア系俳優として初めての主演女優賞に輝く快挙を達成したアメリカ映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が世界の話題を席巻したかと思えば、日本では一風変わった江戸幕府が舞台のドラマ『大奥』の続編が決定。2つの人気作の共通点は「パラレルワールド」が舞台だということ。なぜいま、みんなこぞって並行世界に行きたがるのか?

 独特の視点や感性で社会を観察し発信するイラストやエッセイが人気のコラムニスト、辛酸なめ子さん。彼女には“別の世界を生きるもうひとりの自分”がいるという。

「自分の生き方が、結婚とか出産とか、社会一般でいわれているような“普通の幸せ”とされることと、少しずつずれ始めているかもしれない……そう思い始めた30代の頃から、たびたびどこか遠くでまったく別の暮らしをしている自分、つまり『パラレルワールド』にいるかもしれないもうひとりの私に、思いをはせるようになったんです」

 辛酸さんが想像する「もうひとりの自分」は埼玉の郊外で夫と子供と暮らしている。

「堅い職業に就く夫と、子供がいるんです。子供のためにキャラ弁を作って、休みの日は家族で出かけて……みたいなことをたびたび考えます」(辛酸さん)

 もしかするといま自分がいるこの世界とは“別の世界”が存在していて、自分はそこでまったく“違う人生”を送っているかもしれない……近くて遠い異世界は、多くの人を魅了し、さまざまなエンタメ作品で描かれてきた。

 もし大奥の世界が男女逆転で、将軍が女性だったら──そんな“江戸時代のパラレルワールド”を描いたドラマ『大奥』(NHK)は大反響を呼び、今秋放送予定で「シーズン2」の制作が決定。5月29日から実写化ドラマが始まる藤子・F・不二雄氏のSF短編作品の中にも、「人生の勝利者」を自負する会社社長が、「別の道を選んだ大勢の自分」が一堂に会する同窓会に招かれる『パラレル同窓会』という一編がある。

 今年のアカデミー賞で7冠に輝いた映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』もまた、主人公がパラレルワールドを行き来し、それぞれの世界を生きる様子が大反響を呼んだ。

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