芸能

韓国出身シンガーソングライターKさん「『すべらない話』で日本語のテンポを学んだ」【連載「日本語に分け入ったとき」】

韓国出身のシンガーソングライターのKさん

韓国出身のシンガーソングライター・Kさん

 日本語を母語としないながらも、今は流暢でごく自然な日本語で活躍している外国出身者は、どのような道のりを経てそれほどまで日本語に習熟したのか。日本語教師の資格を持つライターの北村浩子氏がたずねていく。1人目は韓国出身のシンガーソングライターのKさんにうかがった。【全3回の第3回。第1回から読む

 * * *
 日本語を教えていると(これはいいことではないのだが)どうしても「正しさ」に重きを置く癖がついてしまう。意味が分かる、伝わるだけでなく、話されている日本語が、文法的・TPO的に正しいか気になってしまうのだ。Kさんの日本語は、30分、40分聞き続けていてもまったく問題がなく、独学でこんなふうになれるんだと圧倒された。

 テキストや問題集を使ったりはしなかったのだろうか。

「日本に来ることが決まった時、挨拶表現とかが載っている本をちょっと読んだりはしましたけど、それからは一切読んでないですね。日本語のテンポを知りたくて、当時『人志松本のすべらない話』のビデオやアーティストのインタビュー映像を見て、人が喋っているのをとにかく聴くようにしてたのが、勉強っていえば勉強だったのかもしれないです。

 僕はどっちかっていうと耳から覚えるのが先で、慣れてきたら文字を見るというタイプなので、メールやメッセージアプリで日本語の文字が問題なく使えるようになったのは、話せるようになった後だったんですよね。それまでも、ひらがな、カタカナ、あとちょっとした漢字は読めたり書けたりしてたんですけど、スラスラ使えるようになったのは、話せるようになって4年後くらいです。

 自分としてはその順番で良かったと思っていて、というのはその時点で日本語のデータが頭の中に結構あったので、文字にシフトチェンジするのがそんなに難しくなかったんです。子供が最初に耳から言葉を覚えて少し話せるようになって、学校に入って文字を教わるっていうのと同じ順番。今、うちの上の子が7歳で、分からない言葉は自分で調べさせているんですけど、僕も子供と同じ方法でやってきたわけです。そのやり方が自分に合ってたんですよね」

 日本語で日本語を覚え、蓄積した語彙を生かして文字に移行する。理想的だと思うのと同時に「授業で文法を学ぶこと」の意味を考えてしまった。文法の勉強は(わたしの教え方の問題もあるが)必ずしも楽しくはない。アニメなど日本の文化に興味を持って来日した留学生たちが、文法を詰め込まれて「ああ……」という表情をしているのを見ると、自分の仕事とは言え申し訳ない気持ちになることがある。

 という話を、悩み相談のようにKさんに打ち明けてみた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平(左)異次元の活躍を支える妻・真美子さん(時事通信フォト)
《第一子出産直前にはゆったり服で》大谷翔平の妻・真美子さんの“最強妻”伝説 料理はプロ級で優しくて誠実な“愛されキャラ”
週刊ポスト
「すき家」のCMキャラクターを長年務める石原さとみ(右/時事通信フォト)
「すき家」ネズミ混入騒動前に石原さとみ出演CMに“異変” 広報担当が明かした“削除の理由”とは 新作CM「ナポリタン牛丼」で“復活”も
NEWSポストセブン
万博で活躍する藤原紀香(時事通信フォト)
《藤原紀香、着物姿で万博お出迎え》「シーンに合わせて着こなし変える」和装のこだわり、愛之助と迎えた晴れ舞台
NEWSポストセブン
ドラマ『あなたを奪ったその日から』主演の北川景子(時事通信フォト)
《北川景子主演》“子どもの誘拐”がテーマの『あなたを奪ったその日から』は共感を呼べるのか? 名作『八日目の蝉』『Mother』との違いとヒットへの勝算
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが『あんぱん』にどハマり(HPより)
朝ドラ『あんぱん』は随所においしい“餡”が詰まっている! 河合優実、原菜乃華、志田彩良、市川知宏…出演者たちにもドラマあり
女性セブン
川崎
“トリプルボギー不倫”川崎春花が復帰で「頑張れ!」と声援も そのウラで下部ツアー挑戦中の「妻」に異変
NEWSポストセブン
最後まで復活を信じていた
《海外メディアでも物議》八代亜紀さん“プライベート写真”付きCD発売がファンの多いブラジルで報道…レコード会社社長は「もう取材は受けられない」
NEWSポストセブン
28歳で夜の世界に飛び込んだ西山さん
【インタビュー】世界でバズった六本木のコール芸「西山ダディダディ」誕生秘話、“夢がない”脱サラ社員が「軽い気持ち」で始めたバーダンスが人生一変
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《“イケメン俳優が集まるバー”目撃談》田中圭と永野芽郁が酒席で見せた“2人の信頼関係”「酔った2人がじゃれ合いながらバーの玄関を開けて」
NEWSポストセブン
六代目体制は20年を迎え、七代目への関心も高まる。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
山口組がナンバー2の「若頭」を電撃交代で「七代目体制」に波乱 司忍組長から続く「弘道会出身者が枢要ポスト占める状況」への不満にどう対応するか
NEWSポストセブン
日本館で来場者を迎えるイベントに出席した藤原紀香(時事通信フォト)
《雅子さまを迎えたコンサバなパンツ姿》藤原紀香の万博ファッションは「正統派で完璧すぎる」「あっぱれ。そのまま突き抜けて」とファッションディレクター解説
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! ゴールデンウィーク大増ページ合併号
「週刊ポスト」本日発売! ゴールデンウィーク大増ページ合併号
NEWSポストセブン