初日からの満員御礼が続く大相撲5月場所では、東関脇でモンゴル出身の霧馬山が12日目に大関・貴景勝を寄り切って10勝を挙げたことで、大関昇進の目安とされる直近3場所の合計が33勝となり、場所後の大関昇進が当確となった。久しぶりに主役と期待される力士たちが優勝争いに顔を揃えて土俵上は盛り上がりを見せているが、会場となる両国国技館では場所直前に土俵を去った力士も“存在感”を見せていた。
優勝争いのトップを走るのは霧馬山と同じくモンゴル出身で4場所連続休場明けの横綱・照ノ富士。今場所の成績次第では引退と懸念する声もあったが、見事に復活の土俵となっている。西関脇で9場所連続勝ち越しを決めた豊昇龍も同じモンゴル出身力士だし、東前頭11枚目ながら台風の目として上位陣と対戦した北青鵬もモンゴル生まれだ。そうしたなか、国技館内にある売店でもあるモンゴル出身力士が“奮闘”していた。場所直前の5月4日に電撃引退した逸ノ城である。
国技館内には売店がいくつかあるが、清見潟親方(元関脇・栃煌山)、小野川親方(元前頭・北太樹)、熊ヶ谷親方(元前頭・玉飛鳥)といった若手親方10人が店頭に立って販売する相撲協会直営の「親方売店すも~る」は行列ができることで知られている。
定番の力士タオルや応援うちわをはじめ、力士の四股名・写真をプリントしたオリジナル商品が50種類ほど用意されている。その売り場で、逸ノ城の特設コーナーが設けられているのだ。
ラベルに〈逸ノ城引退メモリアルグッズ〉と書かれたコーナーには、うちわ、土俵の土ストラップ、顔ハンカチなどが集められ、「在庫僅か 売切御免」の吹き出しラベルもつけられている。「在庫一掃セール」なのだろうか? 協会関係者はこう言う。
「シーズン後に引退発表というケースがほとんどの野球やサッカーと違って、相撲は2か月に1度開催される場所中にいきなり引退ということが少なくない。そのため、引退した力士の在庫を多く抱えるリスクが常にある。
協会は引退力士のグッズも在庫がなくなるまでは売店で販売することを認めており、白鵬(現・宮城野親方)や稀勢の里(現・二所ノ関親方)のように引退を惜しむファンがグッズを奪い合うケースもある。ただ、そういう事例は引退後も親方として協会に残る人気力士に限られます。トラブルがあって引退していく力士のグッズはほとんど売れないのが常です。そういう意味では親方とモメて引退した逸ノ城も例外ではない」