鑑賞後、しばらく経って思い出す時に「料理」が印象的な映画やドラマはないだろうか。それは「盛り付けが美しい」だけでなく、知っている料理なのに「やたら美味しそうに見える」などの場合もある。そんな映像描写を裏側で支える職業が、フードスタイリストである。劇中の料理を作り、似合う食器やアイテムを揃えてコーディネートしたり、演者に料理指導をしたり……。ドラマによる“飯テロ”という言葉がささやれる昨今、作品でも料理の存在価値は日々上昇している。その第一線で活躍する人気フードスタイリストに、ライターの小林久乃氏が話を聞いた。【前後編の後編】
* * *
今回は登場する料理が話題のドラマ『かしましめし』(テレビ東京系)に参加する飯島奈美さんのほか、彼女に師事し、自らもフードスタイリストとして活躍する板井うみさん、岡本柚紀さんに話を聞いた。
飯島さんが主宰するフードスタイリスト事務所には、さまざまな仕事の依頼が舞い込む。映画、ドラマ、CM、スチール、料理教室と、食に関わることであれば何でもござれ、の彼女たち。仕上げた料理は観る人の食欲を刺激して、作品を盛り上げる一手となる。
料理がメインでも風景でも「変わらず自分の思いを載せている」
──今回の『かしましめし』は飯島さんだけではなく、多くのフードスタイリストさんが参加されています。
飯島さん:今回の料理は原作漫画を忠実に再現する、ということをベースにして、私の事務所から3〜4名のチームで参加しています。それぞれに違った現場を持っているので、いつもメニューや作業の情報を共有して、稼働できるようにしました。
──ドラマ『深夜食堂』(2009年〜)、朝ドラ『ごちそうさん』(2016年)、『カルテット』(2017年)など、画面で観る飯島さんの料理は本当に美味しそうです。皿の上の料理がキラキラ輝いているというか……なにか、演出に狙いがあるのでしょうか?
飯島さん:ありがとうございます。とにかく“でき立て”を撮影で使うようにしています。サラダや、おひたしのような副菜で冷たくてもいいメニュー以外、冷めた料理は決して(映像に)出しません。現場でラップをかけてスタンバイするのはテスト撮影だけにしてもらっています。何か覚えてくださっている料理はありますか?
──『ごちそうさん』のオムレツですねえ……(遠い目)。もう黄色と赤のコントラストがすごかったです。
飯島さん:あれも湯気が本当にきれいに立ち上がっていて、とっても美味しそうでした。あのときの撮影では、一気に15皿ぶんのオムレツをセット裏で仕上げました。噂を聞いた、テレビ局のプロデューサーさんたちが駆けつけてきて、みんなの注目を浴びながら、オムレツを作ったんです。緊張しました。