歌舞伎俳優の市川猿之助(47)が一家心中を図ったとみられる事件で、本人は一命をとりとめたものの、父親で歌舞伎俳優の市川段四郎さん(享年76)と母親の喜熨斗延子さん(享年75)は死亡した。猿之助は警察に「家族会議をして、あの世で生まれ変わろうと両親と話した」と説明したことがわかっているが、事件には解明されていない数々の疑惑と謎がある。
松竹はなぜ「雇用関係にない」とコメントしたのか
事件の第一報後、松竹はコメントで「雇用関係にない歌舞伎俳優さんのプライベートな事に関わる内容」と述べた。まるで俳優たちに責任を丸投げしているかのような内容に世間からは批判の声が上がったが、松竹と歌舞伎俳優の関係とはどうなっているのか。
「松竹はあくまでも『興行主』。テレビ局と俳優の関係に近く、キャスティングはしても、マネジメントはしない。芸能事務所と違うのはその点です。松竹もそう説明せざるを得なかったのでは」(ベテラン演芸記者)
市川團子はなぜ一晩で代役を務められたのか
猿之助が主演を務めていた明治座公演の演目「不死鳥よ 波濤を越えて」は、事件当日と翌日こそ休演となったものの、2日後には香川の息子・市川團子(19)が代役を務め、大成功を収めた。
「実質團子さんは1日で準備をし、通し稽古はできなかった。しかも猿翁さんの作品であるこの演目の上演は44年ぶり。ただ、團子さんは歌舞伎の型への理解が深く、ハードルの高い台詞回しや踊りをクリアできた。
さらに、この演目は歌を披露しなければいけないのですが、團子さんは三味線、鳴り物と唄の稽古も若手の誰よりも重ねていた。そのこともあって、周囲を驚かせるほど圧倒的な歌唱力をみせることができたのです」(同前)
「猿之助」の名跡はどうなるのか
猿之助の名前は400年続く歌舞伎の世界でも珍しく、150年以上にわたり途絶えたことがない。
「團子くんが継ぐのが既定路線ですが、まだ年若く、さらに襲名には四代目(現・猿之助)の承認が必要なため、彼が今後罪に問われた場合、時間がかかる。そこで香川さんの盟友で澤瀉屋の師匠筋にもあたる市川宗家の当代團十郎さんが團子くんの後見人となり、襲名までの間、支えていくそうです」(梨園関係者)
※週刊ポスト2023年6月9・16日号