前著『なんとめでたいご臨終』から6年、在宅医看取りを1800人以上経験した在宅医・小笠原文雄による著書『最期まで家で笑って生きたいあなたへ なんとめでたいご臨終(2)』が話題を呼んでいる。『週刊新潮』(5月 18日号)では立川談四楼さんが《そんな私に本書は希望を与えました。在宅医療という名の希望です》と、『サンデー毎日』(5月28日・6月4日号)では大平一枝さんが《読み終えて気づいた。これは、生き方の本だ》と絶賛している。そこで、小笠原文雄先生が『最期まで家で笑って生きたいあなたへ』の読者から届いた質問に答える。
どうして家に帰ると皆さん、元気になるんでしょう?
【質問】本を読んでつくづく不思議に思ったのは、いつ亡くなってもおかしくないと宣告されたりしていたかたが、家に買えるとどうして皆さん、元気になるのかということです。私自身は家をそんなに居心地のいい場所と思ったことがないのですが、そんな私でも最期の家で過ごした方が元気になれますか?(60代・女性)
【小笠原先生の回答】
まず、家に帰るとホットコーヒーを飲まなくてもホッとする(笑い)。ここが家に帰ると元気になる、いちばん大きい理由かなと思います。家だったら、好きなお酒も飲めますし、好きな食べ物も食べられます。大好きなペットとだって暮らせますからね。
それと、まだまだ自分が死ぬと思っていない元気なかたは、どうして家がそんなにいいの? こんな狭くて古い家よりきれいな病院の方がいいよ、と思われるかもしれませんが、いざ、もう死ぬかもしれないとなったら、人間の考え方はガラッと変わります。私はそうしたかたをこれまでたくさん見てきました。亡くなりそうなかたは、家のそこかしこに、これまで生きてきた記憶、自分が元気だった頃のことを思い起こすんです。
大雨が降ったときに雨漏りしてできた家の天井のシミは、元気な人にとっては友達に見られたら恥ずかしい、汚いと思う存在かもしれませんが、自分が死ぬと思うと、そのシミは、あの大雨の日のことを思い出すきっかけになります。
あの頃こんなふうに仕事をしていた、恋をしていた、とイキイキとしていた自分の記憶がよみがえって、生きる希望、生きる力がみなぎって元気が出ます。
認知症の治療法に回想法というものがありますが、家には思い出があちこちにあるわけですから、過去を回想するのにこれ以上ふさわしいところはないわけです。
それともう1つ、病院と家では、同じ痛みでも家に帰ると和らぐので、同じ医者が同じ鎮痛剤の注射を打っても、家での方が効きやすいんです。痛みが取れれば元気になりますからね。緩和ケア病棟の医師から、「小笠原先生たちは家だからうまくいくだけでしょ。ぼくたちは病院でやってるんだからうまくいかないのは当たり前ですよ。病院の医者が悪いんじゃないんです」などとよく言われます。