いよいよ解散・総選挙を視野に入れた岸田文雄・首相の足元で、政権を揺るがしかねない事態が進んでいる。自民党と公明党の亀裂だ。きっかけは総選挙の候補者調整をめぐる岸田首相の強硬姿勢だった。
「公明党の要求を飲むのは無理だ」。サミット期間中の5月19日、岸田首相は自民党本部で緊急の会議を開き、東京28区(練馬区東部)での公明党候補への一本化を突っぱねることを最終決断した。
堪忍袋の緒が切れた創価学会側は、岸田首相を見限り、報復に転じる準備をはじめた。日本維新の会への“寝返り”だ。
維新はこれまで看板政策「大阪都構想」に公明党が協力するのと引き換えに、公明党が議席を持つ大阪府と兵庫県の6選挙区で独自候補擁立を見送ってきた。
だが、統一地方選の勝利で総選挙では全選挙区に候補者を擁立する方針を掲げ、「早く解散を打ってくるなら、自民と公明による『維新つぶし』だと捉えさせてもらう」(藤田文武・幹事長)と、対決する姿勢を見せている。
選挙情勢分析に定評がある政治ジャーナリストの野上忠興氏は、これは維新から公明へのメッセージだと見る。
「維新は総選挙準備ができていない。維新と公明党の利害は解散先送りで一致している。『すぐ解散なら対立候補を立てるぞ』というのは、公明党に首相を説得して解散を遅らせるように圧力をかけているわけです。それでも岸田首相が解散に踏み切った場合、維新は次の手を打つでしょう。創価学会に、6選挙区に対立候補を立ててほしくなければ、維新に票を回すように持ちかけるはず」
それを裏付けるように維新の藤田幹事長は、「関西以外のところは、これまでも立ててきたし、すべて立てる」(5月22日『ニコニコ生放送』)と、ここに来て関西6選挙区への対立候補擁立を保留する発言に転じた。