今までは上川法(観音開き法)といって、胃の前壁をアルファベットのH型に切除し、逆流防止弁を作る方法が実施されてきた。具体的には胃の粘膜と、筋肉を切除した食道の先端を挟み込み、胃に内容物が入ると胃の筋肉が圧迫され、食道も圧迫し、逆流を防止する仕組みだ。この手技は繋ぎ方が難しく、操作も複雑。しかも繋ぎ目は全て手縫いなので、誰でも簡単に着手できる手術法ではなかった。
「そのような状況を考慮した結果、食道と胃の繋ぎ目の狭い場所を機械で縫い、逆流を防止する弁の形成は丁寧に手縫いで行なうハイブリッド弁形成手術法を開発しました。これまで複雑だった手術が簡便になるだけでなく、施術時間の短縮にもつながっています」(大森外科長)
さらに胃の壁をH型に切ると真ん中の縫い目が弱くなるので、現在はコの字型に切って、逆流防止弁を作る方法を考案した。これにより、逆流防止効果がアップし、術後の患者のQOL(生活の質)向上も可能になりそうだと期待されている。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2023年6月9・16日号