【週刊ポスト連載・医心伝身】食道胃接合部がんとは、食道と胃の境目に発生するがんのこと。がんが表層に留まっていれば内視鏡治療が可能だが、初期でも内視鏡適応外の症例や進行がんでは腹腔鏡による手術が標準治療となる。ただ病巣が胸と腹にまたがっており、術野が狭い上に逆流防止弁の形成も必要な難しい手術だ。しかし、近年では簡便に弁を形成する手術法が開発され、術後の逆流抑制に役立っている。
食道胃接合部がんは欧米人に多い疾病だが、食生活の欧米化により、日本でも患者が増加中だ。初期症状はほとんどなく、進行すると食べ物がつかえる感じがし、胸や背中に痛みが起こることも。
食道と胃は繋がっているが、食道の粘膜は皮膚と同じ扁平上皮細胞、胃の粘膜は胃酸や粘液を分泌する腺細胞で性質が違う。また食道胃接合部がんは食道がんの性質に近い扁平上皮がんと、胃がんの性質に近い腺がんがあり、中には食道に発生したのに腺がんだった症例もある。
大阪国際がんセンター消化器外科の大森健外科長の話。
「このがんは早期に発見できれば内視鏡カメラを使い、粘膜表面の切除が可能です。それが内視鏡の適応外や進行がんでは手術となり、食道は体の後ろ側に近い胸の中心部あたりに位置しているので、腹腔鏡を用いて腹側からアプローチします。これは難度の高い手術のひとつといえます。というのも、横隔膜を通過している食道の穴を広げて治療を行なうため、逆に術野が狭くなってしまうからです」
手術は食道の下3分の1と、胃の入り口側3分の1を切除して繋ぐ(再建)。この時点で懸念されるのは食道と胃を繋ぐと、残った食道は胸の中にあるため、陰圧で胃の中のものが食道に引き込まれ、胸やけや痛みなどの逆流という症状を引き起こすことだ。
そこで逆流のリスクを防ぐため、逆流防止弁を作る必要があるのだ。