もしかしたら大谷翔平本人より大谷のことを知っているのではないか──。そんな人物として注目されているのが、MLBアナリストの福島良一氏(66)だ。現在、インターネットテレビSPOTV NOWやABEMAでMLB中継の解説者を務める福島氏。大谷の記録を隅から隅まで把握する“詳しすぎる”解説が人気を集めている。
それもそのはず、福島氏には、「メジャー観戦歴50年」の蓄積がある。福島氏が語る。
「1968年にカージナルスが日米野球で来日し、ONがいた巨人を子ども扱いしていた。当時は小学生でしたが、その光景を目の当たりにしたのが、メジャーに魅了されたきっかけです。
それから5年後の1973年にパ・リーグの広報部長で日本一のメジャーリーグ通だった『パンチョ伊東』こと伊東一雄さんのつてでMLBを現地で初めて観戦しました。パンチョさんは私をこの世界に導いてくれた恩人です。その頃はまだ高校生でしたが、夏休みを利用して、毎年のように試合を観に行っていました」
1964年に村上雅則が日本人初のメジャーリーガーとして渡米。2年間プレーしたものの、それから1995年に野茂英雄がドジャースでデビューするまで、日本人選手はゼロだった。福島氏はそんな時代からメジャーをひたすら観戦し続けてきた。
メジャー中継の解説者として
このマニアックな趣味が「仕事」につながり始めたのが、中央大学在籍中の1978年。ベースボールマガジン社がメジャーリーグの増刊号を定期的に出版することになり、初めて原稿を書いた。
大学卒業後、一般企業に勤めながらメジャーリーグの原稿を書き続けていたが、1987年にNHKのメジャーリーグ中継の解説を任されたことで生活が一変。「メジャーと言えば福島」と認知されるようになった。それからメジャーリーグの仕事一本で生計を立てられるようになったという。
新著『もっと知りたい!大谷翔平 SHO-TIME観戦ガイド』を上梓するなど精力的な活動を続ける福島氏は、これまでイチロー、松井秀喜、松坂大輔など日本人選手をウォッチし続けてきたが、そのなかでも「大谷は別格」だと語る。
「かつて日本人選手は、外国人プレーヤーのパワーに直面した際に、技で対抗する道を選んでいました。最近の日本人選手は体格が大きい人が多く、外国人プレーヤーの力にもひけを取っていないですが、なかでも大谷は別格ですね。大谷は真正面から力勝負で挑んでいる。これまでの日本人の常識を覆しました」
大谷の打ち立てた記録や将来の見通しをマニアックすぎるほど詳細に解説する福島氏の忙しい日々も続きそうだ。
【プロフィール】
福島良一(ふくしま・よしかず)/1956年、千葉県生まれ。1973年に初渡米して以来、毎年のように全米各地で観戦。MLB全30球団の本拠地はじめ、マイナーリーグ、独立リーグなど数え切れないほどの球場を訪問。現在は日刊スポーツなどで執筆のほか、テレビ、ラジオなどで評論。新著『もっと知りたい!大谷翔平 SHO-TIME観戦ガイド』が6月1日に発売された。
※週刊ポスト2023年6月9・16日号