神奈川県横須賀市の三笠ターミナルから船旅で約30分。“東の軍艦島”と呼ばれる東京湾の第二海堡へ降り立つと、「上陸した瞬間からフィクションの世界へ迷い込んだよう! 他の島では味わえない空気感に包まれます」と、フリーアナウンサーの磯貝初奈さんは大きく目を見開いた。
砲台が設置された人工要塞島を海堡と呼び、首都防衛のため東京湾には明治から大正にかけ第一~第三の海堡が造られている。第三は海に沈み、撤去。第一と第二は通常立ち入り禁止だが、第二は2019年より旅行会社のツアーでのみ一般の上陸が可能となった。
「煉瓦造りの砲塔観測台や地下要塞など、映像の中でしか目にすることのない景色が確かに実在することに衝撃を受けました。海中へ石を落として一から築いた人工島が関東大震災や戦争をくぐり抜けてなお、これほどまで原型を留めていることに驚きを隠せません」
要塞の使命を終え第二海堡は今、湾内の航路の安全を見守る役割を担っている。
「崩壊した煉瓦が横たわる足下の地面は地下要塞の天井にあたるとガイドさんにうかがい、遺構と化した島から戦時下の人の営みが伝わってきました。そんな第二海堡が今では海運の要所として役立ち、明治時代から東京湾を照らす灯台は往路の船からもよく見えました。時代によって役目を変えて生き続ける第二海堡に大きなロマンを感じます」
■第二海堡上陸ツアー
旅行代理店によりさまざまなプランを企画。募集中のツアーは「東京湾海堡ツーリズム機構」ホームページで検索できる。
【プロフィール】
磯貝初奈(いそがい・はな)/1993年生まれ、東京都出身。中京テレビアナウンサーを経て2022年にフリーに転身し、クイズ番組など多方面で活躍。気象予報士の資格を持ち、今春より東京大学公共政策大学院で経済政策を学んでいる。
撮影/恵原祐二 取材・文/渡部美也
※週刊ポスト2023年6月9・16日号