『漫画トリオ』やテレビ、ラジオの司会者として活躍した上岡龍太郎さん(81)が肺がんと間質性肺炎のため亡くなっていたことがわかった。
上岡さんの代表番組の1つが『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)。現在まで続く人気長寿番組だが、1988年の番組開始当初から12年間、初代局長を務めた。当時番組プロデューサーで、退職後もご意見番として番組に関わる松本修氏が、強面で知られた上岡さんの素顔を明かす。
「私と上岡さんとは1976年の番組『ラブアタック!』の頃からのお付き合いでして。普段は本当に穏やかな人でした。本番前の楽屋で、上岡さんは僕が結婚していないことを引き合いにして『松っちゃん、結婚せえへんの?(『ナイトスクープ』で秘書をしていた)岡部(まり)さんとしたらええのに』とイジったりして、みんなで笑い合っていました」
ただし、番組については妥協を許さず、衝突も恐れない。『ナイトスクープ』でもVTRに納得いかず、収録中にもかかわらず激昂することがしばしばあった。
1994年4月29日に放送された『恐怖の幽霊下宿』というテーマでは、下宿先の幽霊に悩む医大生の依頼を桂小枝探偵が検証。しかし霊媒師を呼んで幽霊がいるかなどの聞き込みをしたりと、VTRが“おふざけ”に舵を切りすぎてしまったため、上岡さんは「なんの実証もされてないわけでしょ」と怒り出した。桂小枝も「面白かったらいい」と意見したが、上岡さんは「テレビのそれが一番僕はいかん」と途中退席してしまった。新聞記事にもなるほど大きな騒動になったが、これには後日談がある。
「何年後に、その回のディレクターと上岡さんが2人で食事をしたんです。すると、上岡さんが『君はあの時、ひと言も謝らなかった。もし君が(場をとりなすために)謝ったりしていたら、俺はこの番組を降りていた』と話したそうです。志を持って番組をやっているなら、意見は違えど認めると。上岡さんは毒舌で、怒ることも多かったですが、裏にはこうした人に対する誠実さを持ち合わせていた方だと思います。
ちなみに上岡さんはこの怒って出ていった翌日に東京で生放送があり、それを知っていた僕と百田(尚樹氏)は、空港で上岡さんを待ち構え、偶然を装って『上岡さん』と笑顔で挨拶をした。上岡さんは苦笑いでしたよ」(松本氏)
テレビ界の巨星が、またひとつ墜ちてしまった。
※週刊ポスト2023年6月23日号