UAE当局者との接触
朝日新聞の報道によると、5月22日以降、幹部を含む警察庁と警視庁の捜査官計10人弱がUAEに派遣され、現地の当局者らと面会。数日にわたる協議で、ガーシー氏の旅券が失効している状況や、日本でなんとしても立件・訴追したい意向を伝えたという。その席上で現地当局側が要請を受諾したとするならば、私がガーシー氏に接触した6月1日夜は、すでに着々とガーシー氏連行に向けて現地当局が動いていた最中だったということになる。
その後、青手配だったインターポールの国際手配は加盟各国に身柄拘束を求める赤手配に切り替わった。6月2日付だったという未確認情報がある。そして、翌3日午後8時40分すぎ、友人の日本人男性2人と食事に出かけようとしたガーシー氏は自宅レジデンスの立体駐車場で車に乗り込んだところを、総勢10数人の屈強そうな体格の男たち(ドバイの当局者と見られるが所属不明)に包囲されたのだ。
拘束されて白いトヨタのバンに乗せられたガーシー氏はドバイの警察施設でいったん拘束された後、ドバイ国際空港に移送され、イミグレーションを通過したところで解放された。成田行きのエコノミーチケットを渡され、搭乗を促されていた。こうして約1年半にわたり、暴露系ユーチューバー、国会に出席しない参院議員などとして物議を醸し続けた男はとうとう帰国し、逮捕されることになった。
実はガーシー氏は日本警察から要請されても、UAE当局は動かないはずだと期待していたところがあった。というのは、3月下旬以降、UAEの当局者と思しき人物がガーシー氏に接触していたからだ。詳細は現時点では明かせないが、彼らの対応から即座には強制送還などの動きはないだろうとガーシー氏は踏んでいた。
拙著『悪党』にも登場する元赤軍派の活動家で、現在はUAE在住の経営コンサルタントである大谷行雄氏(71)はガーシー氏にUAE王族を紹介するなどして協力してきた。その大谷氏が5月に発売された雑誌「情況」2023年春号に寄稿した「元赤軍派の私がガーシーを擁護する理由」と題する記事にヒントが言及されているので、少し引用したい。
「(前略)UAE当局がガーシーサイドに接触してきていると側聞しているからである。その動きを分析すれば、少なくとも言えるのは、UAE当局は日本でのガーシーの犯罪行為については実際それほど気に留めていないことだ。むしろ気にしているのは、ガーシーがUAE国内において政党結成や政治活動をしていないかという点である。(中略)UAEにおいては反政府活動につながる結党や政治活動に対して厳しい監視の目を光らせているからだ」