ニュースで取り扱われることの多い「LGBT」や「LGBTQ+」。しかし、その問題点についてしっかり理解できていない人も少なくないのかもしれない。そこで、「LGBTQ+」に関連する状況について、基礎的なところを説明する。
「LGBTQ+」とは、レズビアン(L)・ゲイ(G)・バイセクシュアル(B)・トランスジェンダー(T)などの頭文字を取った言葉で、性的マイノリティ(性的少数者)を表す総称のひとつだ。
かつては「おかま」「おなべ」「ホモ」などの言葉も使われたが、からかいや侮蔑のニュアンスが含まれ、言われる本人たちにとっては嫌な気分にさせられるものであり、現在は、「LGBTQ+」という言葉が多く使われるようになった。
「同性同士で愛し合う人、自分の性別と恋愛の指向、性的な欲望が連動していない人などを、性的マイノリティといいます。ある調査によると、日本のLGBTQ+の人の割合は約1割【※】とされています」
【※性的少数者に関する専門シンクタンク「LGBT総合研究所」の2019年の調査による。全国20〜69才の42万8036人を対象】
こう語るのは、性社会・文化史研究者の三橋順子さんだ。
「世界的に見ても、性的マイノリティは、男女で愛し合う性的マジョリティ(多数派)に比べて社会的立場が弱く、カミングアウト(性的指向や性自認を周囲に伝えること)した場合、仕事を辞めさせられるなどの差別を受けたり、からかいやいじめの対象になってきました」(三橋さん・以下同)
偏見にさらされるだけではない。日本では、社会の制度からもはじかれる。
家族になろうとしても、同性同士の結婚は認められていない。一緒に暮らしたとしても、男女の夫婦のように社会保険の優遇を受けられないし、パートナーの死に際に立ち会えないこともある。遺産ももちろん相続できない。
「周囲の目を気にし、社会的立場を維持するため、自分を曲げて、性的に受け入れられない相手と結婚する性的マイノリティもいます。しかしこれは、自分と周囲を偽り続けることになるため、苦痛を強いられる生活になります。その結果、自分も家族も不幸にしてしまったり、自ら死を選ぶ人も少なくありません」
性的マイノリティへの偏見や迫害は、日本に限ったことではない。そのため、自分たちの権利を守ろうという活動が、1960年代末頃から世界中で行われるようになった。
「活動が実を結び、性的マイノリティの権利が少しずつ拡大していきました。2000年にオランダで同性婚が認められたことをきっかけに、いまでは世界の約2割の国と地域で同性夫婦の権利が、異性夫婦同様に認められるようになりました」