LGBTQ+に関する話題が多いなか、その問題点について果たしてどれくらい理解できているのだろうか──。差別や偏見のない世界を作るには、知らないで済まされないことがたくさんある。そこで、LGBTQ+に関係するニュースについて、専門家に解説してもらった。
■ジェンダーレストイレについて
今年4月に開業した東京・新宿の東急歌舞伎町タワー。その2階に、性別を問わずに誰でも使える「ジェンダーレストイレ」が設けられた。男性の小便用トイレを除いてすべて共用で、男女が隣同士の個室に入るというケースも発生するため、臆測で性犯罪の温床になるなどと言われ、批判をあおるような意見が拡散された。SNS上などでは、
《手を洗うところもメイクを直すところも男女入り乱れるのはあり得ない》
《異性がいると使いにくい》
といった声が上げられた。記者は開業当初に行ってみたが、清潔で明るく快適そうなトイレに見えた。個室は通路に面しており、人通りも多い。異変があればすぐに誰かが気づくように思えるが……。施設担当者に設置理由について話を聞いた。
「ジェンダーレストイレは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の理念でもある"誰一人取り残さない"を念頭に、新宿の多様性を認容する街づくりの観点から、設置導入いたしました」
社会学者の森山至貴さんは、
「ジェンダーレストイレがあることが、問題なのではありません」
と語る。
「生まれたときに判定された性別とは異なる性別として生活しているトランスジェンダーの人々や、男女いずれでもない性別を生きているノンバイナリーの人々にとって、ジェンダーレストイレは安心して利用できるトイレの選択肢のひとつになりえます。性犯罪の防止や、メイクのための空間の確保は重要ですが、これらの問題解決はオールジェンダートイレの設置と両立可能です」(森山さん・以下同)