侍ジャパンの栗山英樹監督が5月末に任期満了で退任した。3月のWBC制覇の熱狂がまだ記憶に新しいなかで、栗山監督の後継者についても大きな関心事となっている。次回のWBCは2026年に開催される。王貞治氏(第1回)、原辰徳氏(第2回)、山本浩二氏(第3回)、小久保裕紀氏(第4回)、そして栗山氏と受け継がれてきたバトンは、誰に渡されることになるのか。
これまでの侍ジャパンのWBC監督が現役時代に主に務めたポジションを見ると、王氏、原氏、小久保氏が元内野手、山本氏、栗山氏が元外野手。五輪監督では北京での星野仙一氏が元投手、東京での稲葉篤紀氏が元外野手で、実は「捕手出身」の代表監督がいない。
NPBでは、西武の黄金時代を築いた森祇晶氏や“ID野球”を掲げてヤクルト、阪神、楽天の監督を務めた野村克也氏など、「捕手出身=名監督」のイメージが強いが、不思議と元キャッチャーのOBは代表監督の座に縁がないのだ。
そうしたなか、栗山氏の後継となる代表監督の人選はどうなるのか。有識者のなかには、「捕手出身」のOBの名前を出す人もいた。阪神、中日でコーチを経験後、大谷翔平(現・エンゼルス)が在籍していた当時の日本ハムでは栗山監督のもとで一軍打撃コーチを務めた柏原純一氏は、次の代表監督に相応しい人物として、1980~90年代の黄金時代の西武で正捕手を張った伊東勤氏を挙げた。
「栗山くらい人柄が柔らかい人なら選手を集めやすいでしょうが、その後任監督は苦労すると思いますよ。そうしたなかで考えると、ボクは西武やロッテで監督をした伊東勤にやってもらいたね。最大の理由はキャッチャー出身だから。やはり視野が広いですよ。栗山と同様に、選手をうまく噛み合わせながら戦う采配になると思いますが、ピッチャーの出来が勝敗の70~80%を占めるなかで、キャッチャー出身の伊東なら采配に期待ができるのではないか。
もちろん、代表監督の場合は作戦面の話は限定的で、どんな選手を招集できるかも大きい。その意味では栗山のように大谷やダルビッシュ(有、パドレス)を呼べるかはわからないが、そこはオールジャパン(NPB)で乗り切っていってもらえるといいなと」
本誌・週刊ポスト6月9日発売号では、「次のWBC監督は誰が相応しいか」を野球評論家20人に聞く総力取材を敢行。そこでは、柏原氏が挙げた伊東氏以外にも、「捕手出身者」の名前が挙がっていた。
◆古田が持っている「国際経験」「野球観」
現役時代は広島カープの正捕手として活躍し、引退後は広島の監督や、阪神、中日、ソフトバンクのコーチを歴任した達川光男氏は、野村克也氏が率いたヤクルトの扇の要として長く活躍した古田敦也氏が、後継監督に相応しいと力説した。
「ボクは『古田ジャパン』を見てみたいよね。国際試合の経験が違うよ。アマチュア時代にはメダル(ソウル五輪で銀)も取っている。あと、栗山監督とつながりがあるからスムーズにバトンタッチできるよね。現役時代にヤクルトで一緒にプレーしていて、古田が栗山の後輩で関係も良好ということだから、いろいろとアドバイスも受けやすいでしょう。直近の侍ジャパンが強くてバランスがよかっただけに、それを継承すべきだと思う。スタッフも大きく変えなくてもいい。コミュニケーション能力もある古田が代表監督になるのが一番いいと思う」