6月14日、岐阜市にある陸上自衛隊「日野基本射撃場」で、自衛官候補生の18歳の男が付近にいた指導役の男性自衛官3人を銃撃した事件。防衛省や岐阜県警によると、52歳隊員は胸に、25歳隊員は脇腹に銃弾を受けて死亡し、別の25歳隊員も左脚に大けがをした。同県警は男を殺人未遂容疑で現行犯逮捕。容疑を殺人容疑に切り替え、岐阜地検に送検された。
現場となった「日野基本射撃場」は市街中心部の岐阜駅から車で約20分ほどの場所に位置し、近隣にも閑静な住宅街が立ち並ぶエリアだった。射撃場から100mほどの家に住む60代の女性が語る。
「(事件発生直後の)9時半過ぎには、救急車や消防のサイレンがすごかった。たくさん車両が停まっていましたが、救急車はすぐにまたサイレンを鳴らして(駐屯地から)出ていったね。近所の奥さんとも『なにか事故があったんだろうね』と話していたら、ヘリがどんどん飛んできて、テレビの報道で知ったというかたちです。
この射撃場は8年ほど前まで屋外射撃場で、当時はドアを閉めていても話もできないくらい、毎日バアンバアンとすごい音が鳴っていました。でも建物ができてからは、音は全くしなくなった。私たちも静かに暮らしていたのですが、まさかこんな事件が起きるとは……」
この日は朝から自衛官候補生向けの射撃訓練が行なわれていたという。実弾を使用する訓練は4回目で、最終日として「実技試験」に当たる科目があった。
「教官ら約50人が候補生約70人を指導していたところ、射撃レーンで待機していた男が突然横を向いて、発砲した。撃たれた3人は防弾チョッキを着用していなかったそうで、男は付近にいた自衛官らに取り押さえられました。使用していたのは『89式小銃』だったということです。男は警察の調べに対し『52歳の隊員を狙った』『(25歳の隊員は)殺すつもりはなく、足を狙った』などと供述している」(全国紙社会部記者)
候補生の男はこの小銃で2人を射殺したことになる。18歳の男が入隊2か月半で手にした「89式小銃」の威力は、どれほどのものだったのか。軍事・安全保障に詳しいジャーナリストの井上和彦氏が説明する。