ああ、いろいろ思い出していたら腹が立ってきた。玲子さんは毎日のように「私がしてほしいのは、運送会社があなたに到着したときに、箱を受け取るのを手伝うことだけです。私を助けてください」という不思議なメッセージを送ってくる。「私は何をすればいいですか」と問えば、玲子さんは多分、「次は住所を教えてください」とくるのだろう。で、「住所もわかった以上、もう逃げられないぞ」と心理的にこっちの首根っこを押さえてから、「お金が入った箱を開けるために、セキュリティー会社に払うお金を◯万円立て替えてほしい。箱の中には3億円入っているからそのお金は自由に使ってください」などと言って、数万円をかすめ取ろうとしているんだろう、と。
SNS詐欺師の場合、たいがいは「海外に住んでいます」という設定で、翻訳アプリを使って日本語にしているから、日本語がヘン。
「余命わずか。お金を預けたい」という玲子さんもそう。毎回、文頭は「ご支援ありがとうございます」で、最後は「わかりますか?」だ。なめてんの?
で、私は最後のメールを送った。「玲子さんはもしかしたら私と同業者?(笑)なら、もう少し頭を使った方がいいですよ。あ、ない頭は使えないか。浪花節に『バカは死ななきゃなおらない』という一節があります。さあ、どうぞ3回言ってください」。
それっきり返信がないわよ。
コロナで世の中がガタガタになったいま、結婚詐欺や投資詐欺が増えているという。もし「おかしい」と少しでも思ったら、「同業」で追い払うといい。それか何を聞かれてもダンマリがいちばん。“論破王”になろうなんて絶対に思っちゃダメだよ。と、詐欺被害にウン回も遭った私が言うんだから間違いないって。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2023年6月29日号