誰しも過ちはおかすもの。その時の態度で後に差は出る。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。
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マイナンバー関連のトラブルが、次から次へと明らかになっています。「公金受取口座」に別人の銀行口座が紐づけられたとか、「マイナ保険証」の情報が誤登録されたとか、別人にマイナポイントを付与したとか、他人の年金記録が閲覧可能な状態だったとか……。
どれも「たまたま起きた珍しいミス」ではありません。さまざまな原因で大量の誤登録などが発覚していて、そもそものシステムに不備があったことが指摘されています。政府がポイントで国民の頬を張りつつ、面倒な作業は役所や地方自治体の職員に押しつけて普及を急いだせいで、とっても情けない状況に陥ってしまいました。
指導部のメンツのために勝ち目がない戦いを続けて現場が犠牲になっている構図から、マイナンバーの事業を「現代のインパール作戦」と呼ぶ人もいます。6月初めに実施されたJNNの世論調査では、マイナンバーの活用に「不安を感じている」と答えた人は、「大いに」と「ある程度」を合わせて72%にのぼりました。
これだけ不信感が広がり、批判の声が盛り上がっている原因のひとつは、河野太郎デジタル大臣が火に油をそそぐ「ダメな謝り方」を繰り返したことにあると言えるでしょう。ベースとして、いくら説明されても、マイナンバーカードのどこが便利でどう必要なのかがわからないということもあります。
5月23日、マイナンバーに別人の口座を誤登録するケースが大量にわかったことについて、河野大臣は「支援窓口の端末操作で利用者がログアウトをし忘れて、次の人がそのまま自分の口座を登録したから」と説明しました。つまりは「現場のミス」だと強調したわけです。この説明を聞いて「どんどん尻を叩かれて過酷な状況に追い込まれ、ミスがあったら責任も押し付けられるなんて、なんて気の毒な」と思った人は多いでしょう。
これに先立って5月初めには、コンビニでマイナンバーカードを使って住民票などの写しを取ろうとしたら、別人の証明書が交付されるケースが相次ぎました。そのときも河野大臣は、いちおう「申し訳なく思っております」と謝りはしましたものの、開発した会社の名前をあげつつ「アプリケ―ションを原因とするもの」とアプリを悪者にします。
続いては、5月26日の記者会見での謝罪。マイナ保険証や公金受取口座の誤登録など「一連の事案」が起きていることを認めた上で、こう謝りました。
「国民のみなさまに不安を与えることになってしまい、たいへん申し訳なく思います」
「不安を与えた」のは結果であって原因ではありません。事業全体のトップとしてもっとも謝らなければいけないポイントは、不完全なシステムや無理のある運用で大量のミスが発生したこと。「不安を与えることなってしまい」という謝り方だと、国民が必要以上に不安を感じているから騒ぎが大きくなっているんだと言いたいように聞こえます。
デジタル庁は昨年7月から、公金受取口座を別人の口座に登録している事例があることを把握していたとか。なぜ発表が遅れたのかを問われた河野大臣は、情報が自分のほうにちゃんと伝わってこなかったと言い訳しつつ、こう謝りました。
「少しデジタル庁としての感度が低かったというところは、お詫びを申し上げなければならないと思っております」
要は「トップに大事な情報が入ってこない体質や体制だった」「そんな組織のトップである自分の能力に問題があった」ということに他なりません。ここで「感度が低かった」とフワッとした言葉を使ってしまうところに、少しでも自分の“罪”を軽く見せようという姑息な魂胆が伺えます。しかも、悪いのは現場の職員だと言いたげな気配も。本人は気の利いた言い回しで自分の株を上げようとしたのかもしれませんが、完全に逆効果です。