ライフ

河野デジタル相の「ダメな謝罪」に学ぶ、相手の怒りをかき立てない「いい謝罪」

時事通信フォト

歯切れも悪かった(時事通信フォト)

 誰しも過ちはおかすもの。その時の態度で後に差は出る。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。

 * * *
 マイナンバー関連のトラブルが、次から次へと明らかになっています。「公金受取口座」に別人の銀行口座が紐づけられたとか、「マイナ保険証」の情報が誤登録されたとか、別人にマイナポイントを付与したとか、他人の年金記録が閲覧可能な状態だったとか……。

 どれも「たまたま起きた珍しいミス」ではありません。さまざまな原因で大量の誤登録などが発覚していて、そもそものシステムに不備があったことが指摘されています。政府がポイントで国民の頬を張りつつ、面倒な作業は役所や地方自治体の職員に押しつけて普及を急いだせいで、とっても情けない状況に陥ってしまいました。

 指導部のメンツのために勝ち目がない戦いを続けて現場が犠牲になっている構図から、マイナンバーの事業を「現代のインパール作戦」と呼ぶ人もいます。6月初めに実施されたJNNの世論調査では、マイナンバーの活用に「不安を感じている」と答えた人は、「大いに」と「ある程度」を合わせて72%にのぼりました。

 これだけ不信感が広がり、批判の声が盛り上がっている原因のひとつは、河野太郎デジタル大臣が火に油をそそぐ「ダメな謝り方」を繰り返したことにあると言えるでしょう。ベースとして、いくら説明されても、マイナンバーカードのどこが便利でどう必要なのかがわからないということもあります。

 5月23日、マイナンバーに別人の口座を誤登録するケースが大量にわかったことについて、河野大臣は「支援窓口の端末操作で利用者がログアウトをし忘れて、次の人がそのまま自分の口座を登録したから」と説明しました。つまりは「現場のミス」だと強調したわけです。この説明を聞いて「どんどん尻を叩かれて過酷な状況に追い込まれ、ミスがあったら責任も押し付けられるなんて、なんて気の毒な」と思った人は多いでしょう。

 これに先立って5月初めには、コンビニでマイナンバーカードを使って住民票などの写しを取ろうとしたら、別人の証明書が交付されるケースが相次ぎました。そのときも河野大臣は、いちおう「申し訳なく思っております」と謝りはしましたものの、開発した会社の名前をあげつつ「アプリケ―ションを原因とするもの」とアプリを悪者にします。

 続いては、5月26日の記者会見での謝罪。マイナ保険証や公金受取口座の誤登録など「一連の事案」が起きていることを認めた上で、こう謝りました。

「国民のみなさまに不安を与えることになってしまい、たいへん申し訳なく思います」

「不安を与えた」のは結果であって原因ではありません。事業全体のトップとしてもっとも謝らなければいけないポイントは、不完全なシステムや無理のある運用で大量のミスが発生したこと。「不安を与えることなってしまい」という謝り方だと、国民が必要以上に不安を感じているから騒ぎが大きくなっているんだと言いたいように聞こえます。

 デジタル庁は昨年7月から、公金受取口座を別人の口座に登録している事例があることを把握していたとか。なぜ発表が遅れたのかを問われた河野大臣は、情報が自分のほうにちゃんと伝わってこなかったと言い訳しつつ、こう謝りました。

「少しデジタル庁としての感度が低かったというところは、お詫びを申し上げなければならないと思っております」

 要は「トップに大事な情報が入ってこない体質や体制だった」「そんな組織のトップである自分の能力に問題があった」ということに他なりません。ここで「感度が低かった」とフワッとした言葉を使ってしまうところに、少しでも自分の“罪”を軽く見せようという姑息な魂胆が伺えます。しかも、悪いのは現場の職員だと言いたげな気配も。本人は気の利いた言い回しで自分の株を上げようとしたのかもしれませんが、完全に逆効果です。

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン