夏ドラマといえばこれまで7月スタートがテレビ界の常識だったが最近、6月に“フライングスタート”するドラマが増えている。その背景にはテレビ局のさまざまな事情が関係しているようだ。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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現在4月にスタートした春ドラマは、最終話の放送がはじまっています。通常、連続ドラマは季節(3か月)ごとに新たな作品が放送されていて、春ドラマで言えば4月~6月が放送期間。7月に入ると夏ドラマがはじまり、9月まで放送されるというスケジュールで進められていきます。
ところが今年は7月を待たずに“6月スタート”のドラマが目白押し。ここまで、3日に『テイオーの長い休日』(東海テレビ・フジテレビ系、土曜23時40分)、6日に『もう一度パパと呼ばれる日』(フジテレビ系、月曜24時25分)、7日に『刑事7人』(テレビ朝日系、水曜21時)、12日に『褒めるひと褒められるひと』(NHK総合、月曜~木曜22時45分)と『さらば、佳き日』(テレビ東京系、月曜23時6分)がスタートしました。
さらに、24日に『やさしい猫』(NHK総合、土曜22時)、27日に『なれの果ての僕ら』(テレビ東京系、火曜24時30分)、29日に『量産型リコ ―もう1人のプラモ女子の人生組み立て記―』(テレビ東京系、木曜24時30分)の初回放送も予定されています。
30日に『夫婦が壊れるとき』(日本テレビ系、金曜25時)と『クールドジ男子』(テレビ東京系、金曜24時52分)の最終話が放送されるなど、まだ春ドラマの話題が多く、新作としての注目を浴びにくい時期に、なぜスタートさせるのでしょうか。
“空白期間”のリスクが増している
まず連続ドラマが季節ごとに放送されているのは、スポンサーへの営業と契約、キャストとスタッフの契約とスケジュール管理などが前提にあります。また、季節ごとに新作を放送することで番組表にフレッシュで華やかな印象を与え、視聴者の興味をうながすこと。出演俳優が集う特番を筆頭にPRがしやすいことなど、いくつかの背景があります。
ただ以前から、「各クールの最終月は最終話が放送されると、次の作品がはじまるまで『見るドラマがない』という空白期間になってしまう」という課題が指摘されていました。本来、「連ドラの放送枠は空白期間がないのがベター」と言われていて、たとえば朝ドラは最終話からわずか3日後に新作をスタートさせて長年、高視聴率をキープしています。
一方、民放のゴールデン・プライム帯は、放送回数が以前より減ったことに加えて、特番の編成などもあるため、なかなか「最終話の翌週に次作を放送」というわけにはいきません。短くても2~3週、長ければ1か月以上の空白期間があり視聴習慣を保つことが難しいところがあります。