6月に入っても好調を維持している阪神。“強いタイガース”を牽引するのが岡田彰布監督(65才)だが、とりわけ冴え渡るのが守りの面での手腕だ。元阪神監督で現役時代に岡田監督と二遊間を守った藤田平氏が語る。
「野球をよく勉強している岡田の神髄は、ピッチャーを含めて守り勝つ野球です。今季の阪神は粘り強い野球が増え、1点差の試合に強い(13勝4敗。6月14日時点。以下同)。延長戦でも負けていません(4勝2分)。岡田は内野手出身で守備を重視しているから、接戦になるとその良さが発揮されるのでしょう」(藤田氏)
また多くのOBが今季の好調のカギとして挙げるのが、中野をショートからセカンドへコンバートさせたことだ。2番に固定された中野拓夢(26才)は、昨季まで2年連続でセ・リーグのワースト失策数を記録していた。
「甲子園は基本的に土のグラウンドで球足が遅く、肩が弱いと深く守れないので守備範囲が狭くなり、エラーが多くなる。中野の肩が弱いことを見抜いた岡田がセカンドにコンバートさせたことで内野の守備が生き返りました。中野自身も負担が軽減されて打撃に集中できるという相乗効果が生まれた。セカンド出身の岡田らしい見事な決断でした」(同前)
第一次岡田政権(2004~2008年)のリーグ優勝時(2005年)の1番打者であった赤星憲広氏も岡田阪神の守備力を高く評価する。
「岡田監督が野球で最も重視するのは守りで、2005年にセ・リーグを制した時も『センターラインを中心に今年も守り抜く』という方針でした。昨季までの阪神は失策が目立ち、岡田監督は就任にあたってポジションを固定して守りを固めることを最優先にした。中野だけでなく、大山悠輔(28才)をファーストに、主にライトを守っていた佐藤輝明(24)をサードに固定したことが首位を快走する原動力になっています」
第一次岡田政権の必勝パターンは、ジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之のJFKで構成されるリリーフ陣だったが、今季は前回の監督時とはまた一味違う継投策が光る。第一次岡田政権時に投手コーチを務めた中西清起氏が語る。
「当時も継投は最終的に岡田さんが決めていました。前政権の時は勝ちパターンと負けパターンの継投を使い分けていたが、今季はJFKのような絶対的な存在がいないため、その時々で調子の良いピッチャーを送り込んで結果を出しています」
元阪神監督で、岡田監督が1980年に入団した当時、一軍守備・走塁コーチだった安藤統男氏も「岡田はピッチャーの使い方が抜群にうまい」と語る。
「特に若手投手は二軍をうまく使って調整させて、一軍に戻して中継ぎでテストしてから先発に回すなど用意周到で、実際に二軍から上がってきた桐敷拓馬(23)や富田蓮(21)も力がある。
そうして先発には長いイニングを任せる一方で、岩崎優(31)や湯浅といったリリーフの主力は1イニングに満たない起用で連投を避ける。夏以降、リリーフ陣にムチを入れる勝負時をにらんでの継投法でしょう」
※週刊ポスト2023年6月30日・7月7日号