【著者インタビュー】崔美淑さん/『内臓風水 運気を上げる体のつくりかた』/幻冬舎/1540円
【本の内容】
《元気な人、運気がいい人、というのは、内臓の調子が整っている人だと私は思います》(「はじめに」より)。中医鍼灸師の著者は、長年の治療から《病気の原因は臓腑と関係しているだけでなく、その人の人間関係、心の状態をも反映している》と指摘する。そして編み出した「内臓風水」では、生まれつき弱い内臓を元気にする方法と注意すべき症状が具体的に記されている。《健康が人生の目的ではありません。日々を楽しむために健康な体が必要なのです》などの箴言や、「心が元気になるツボ」といったコラムも満載。自分の体と心の状態がわかる“読む薬”だ。
風水というと家の間取りや方角が思い浮かぶ。風水の考え方は土地の地勢や水勢を見て、エネルギーの集まる場所を探し当てることだが、それを人体に当てはめ、内臓からエネルギーを高める体づくりについて解説した本だ。自然の流れに沿って、本来、人に備わっている治癒力を引き出す方法も詳しく書かれている。
崔美淑さんは中国・ハルピン市出身。大学で中医学(東洋医学)を学び、医師としてのキャリアをスタートさせた。2004年に来日し、日本の専門学校で鍼灸師の資格を得たのち、京都大学大学院で精神分析学を研究した。現在は東京・高輪で鍼灸院を主宰し、著名人の顧客も多い。
「20年近く治療を続けてきましたが、自分が経験の中で統計的につかんだことには何かしら根拠があるはずと思って行き当たったのが『洛書』、中国の易学の本でした。これまでの臨床経験の中で知り得たことと風水の陰陽五行とを組み合わせてみたらピタッと一致して、その結果生まれたのがこの本です。
治療家として1人でも多くのかたに元気になってほしいという気持ちと、この先、万が一、自分が仕事を辞めても、後を引き継いでくれる人が出てきてほしいと願って書きました」
治療は、症状が出るにいたるまでのストーリーをじっくり聞くことから始めるという。
「左肩が痛くて眠れないと言う人に、なぜ眠れないかを聞いていくと、たとえば何年も離婚裁判が続いているとか、さまざまなストーリーが出てきます。自分の経験として、単純に肩だけが痛くなる人は少なくて、仕事だったり家庭だったり恋愛だったりお金の面だったり、何かしらの悩みが肩の不調に表れていたりします」
心と体を切り離して考えることはせず、根本的な原因にさかのぼって治療し、体をメンテナンスして病気にならないことに重きを置く。
「今は基本的に紹介のみで、10年、15年とつきあいの長いお客様が多いからできることかもしれません。人間の体は年齢とともに変わっていきます。体を診ながら、それぞれの年齢でなりやすい病気を防ぐ、『未病治』という考えで治療に当たっています」
「未病治」とはあまり聞き慣れない言葉だが、中国最古の医学書『黄帝内経』に出てくる、「優秀な医者は未病を治す」という一節に由来する。「未病」というのは、病気にはいたらない、本人も気づいていないような不調をさす。
「中医学は精神と体を別々に考えないので心理ケアも含まれるんですが、20代のころの自分にはなかなか難しかったんですね。当時は結婚してなかったですから、患者さんに離婚したほうがいいかと聞かれても簡単に答えられないですよね? 自分の勘ではなく科学的に答えられるようになりたい、心の構造というものを理解したいと思って精神分析を学びました。
精神分析家の中にもマッサージや鍼など身体セラピーを重視するかたがおられるので、そういうかたたちの本も読みました。中医学の治療法と精神分析的な治療は重なるところがたくさんあって、母子関係をテーマに論文も書いています」