1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、宝塚記念についてお届けする。
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上半期GIシリーズの最終戦、ファン投票で出走馬が決まる“春のグランプリ”だけあって、歴代の勝ち馬は錚々たる顔ぶれです。しかし一方で、2007年のウオッカ(8着)や2015年のゴールドシップ(15着)、2017年のキタサンブラック(9着)などの人気馬が意外な負け方をしているレースでもあります。昨年も前年の年度代表馬だったエフフォーリアが6着でした。
かくいう僕も、実績十分の馬の騎乗依頼を何度かいただきながら、なかなか勝てないレースでした。このレース最後の騎乗となった2016年に牝馬マリアライトで初めて勝たせてもらいましたが、この時の2着はドゥラメンテ、3着がキタサンブラックと今を時めくリーディング上位種牡馬。もちろん現役時代の実績は抜群で、実力的に優っているとは言えませんが、マリアライトも前年エリザベス女王杯を勝っている。その後の状態もずっとよかったし、GIIを2戦しただけで余力もありました。8番人気でしたが、ちょっと湿った馬場も味方してくれて展開もドンピシャ、全部が噛み合ったようです。
オープンのトップクラスにいるような馬は、この春どこかでGIを使っているはずです。日本だけでなくドバイや香港に適距離のレースがあり、そこを目標に一度仕上げ、圧勝していることもあるでしょう。一方、最初から春シーズンの最後に控える宝塚記念が目標という馬は少ないので、どうしても目に見えない疲れが残ったり、体調のピークを過ぎていたりすることがあるかもしれないのです。
春のクラシック戦線をにぎわせた3歳馬が出走できるように時期を6月後半にずらしたため、暑さも本格的になっているし、雨も多くなってくる。北海道シリーズが始まって、人も馬もなかなか動きづらかったりすることもあります。GIだからジョッキーは優先して乗りに行きますが、僕も土曜日福島で乗っていて飛行機で行くなんてこともありましたね。福島~伊丹便、ありがたかったです(笑)。