受験も勉強も教えない教室として話題の『探究学舎』。代表の宝槻泰伸さん(42才)は、子どもたちの“なぜ?”“やってみたい!”という気持ちを刺激して、“もっと知りたい!”という好奇心を引き出し、学習のエンジンにしていく──。この教育法は、泰伸さんのオヤジこと、父親の徹さん(72才)が試行錯誤しながら長男の泰伸さんを含めた3兄弟に実践して確かめたものがもとになっている。3兄弟全員が高校に通わず京大に合格した宝槻家のオヤジによる独自の教育法は漫画と解説で一冊にまとめられ、『遊んで見つける学びの革命』として発売された。子供の性格に応じて“探究心の持たせ方”は違っていたという。【全3回の第2回。1回目から読む】
同じものを与えても、子どもの性格によって反応が違ったり、誰か1人が興味を示すものでも、あとの2人は無反応ということもあったと3兄弟は振り返る。次男の和政さん(40才)は、「オヤジは子どもの性格に応じて、カスタマイズしていた」と話す。
「ぼくたち3兄弟は性格も違えば個性も異なります。同じものを与えても、反応やハマり方が違う。そんなとき、押しつけるのではなく、子どものリアクションを見ながら足したり引いたり、うまくカスタマイズして与えてくれました」(和政さん・以下同)
父の徹さんは、その道の達人と思える人を、たとえ初対面でも関係なく、ジャンルを問わず、次々と自宅に連れてきた。例えば八百屋のおじさんや手裏剣の達人、動物カメラマンや小説家、路上で見つけたギターの名手など。
「そんなときも、子どもの受け取り方はそれぞれでした。興味を持つこともあれば、そうでないこともあります。私は、手裏剣の達人に感化されて、その時期はずっと手裏剣の練習をしていました(笑い)」
世間のニュースも、徹さんの手に掛かれば、オリジナルの教材になった。
「WBCは、データ野球から現在のビッグデータの話に展開させるでしょうし、野球に熱中していた俳人の正岡子規の話、そしてそこから俳句や明治時代の話に広げて教えてくれると思います。ウクライナ問題なら、第一次世界大戦から話を説き起こすでしょう」
一見、そうとは気づかなくても、世界と自分たちとはつながっている。世界への好奇心や興味を広げることこそ、宝槻家の教育の軸だった。
「オヤジは何事も、まずは自分で試してみるというトライアルにも余念がありませんでした。よさそうだと思ったことを自分で実験してみて、失敗したら別の方法を試すんです。
ただし、ほかの父親と違って、うちのオヤジは自分がいちばん楽しみたい(苦笑)。漫画もゲームもキャンプも、オヤジがいちばん楽しんでいましたから。“子どものためにこうすべき”と考えるのではなく、“自分がいちばん楽しいと思うことを子どもと一緒にやってみる”という方が正しいかもしれません」