受験も勉強も教えない教室として話題の『探究学舎』。代表の宝槻泰伸さん(42才)は、子どもたちの“なぜ?”“やってみたい!”という気持ちを刺激して、“もっと知りたい!”という好奇心を引き出し、学習のエンジンにしていく──。この方法は、泰伸さんのオヤジこと、父親の徹さん(72才)が試行錯誤しながら長男の泰伸さんを含めた3兄弟に実践して確かめたものがもとになっている。3兄弟全員が高校に通わず京大に合格した宝槻家のオヤジによる独自の教育法は漫画と解説で一冊にまとめられ、『遊んで見つける学びの革命』として発売された。宝槻家の教育法は何が違うのか?【全3回の第3回。1回目から読む】
三男の昌則さん(38才)がこんな話をしてくれた。
「自分も子育てをして気づきましたが、親というものは誰しも、子どもの持っている能力を伸ばしてあげるのは、親の責任なんじゃないかという、ある種の強迫観念があります。
でも、子育てとは、そういうことじゃない。漫画にキャンプ、麻雀に映画鑑賞と、わが家はあれこれ親子で一緒になって楽しんできました。オヤジが一貫してぼくらにしてきたことは、決して“能力の開発”などではなくて、一緒にかけがえのない時間を過ごすという、“感動の共有”であり“体験の共有”だったのだと思います。そうしたたくさんの体験を通して、オヤジからは、“世界の楽しみ方”や“世界の見方”を教わったと思っています」
「世界の見方」とは、言い換えれば「自分の頭で考える」ということだと昌則さんは説明する。
「世間の常識とか、学校のルールとか、そういう先入観を排除して自分で考えてみる。夏休みの宿題すら、オヤジは“なぜやる必要があるのか”といったんは疑う人でしたから」(昌則さん)
徹さんはよく、“先生が言っているから正しいとは限らない”と言っていたそうだ。
「それは先生に反抗しろということではなく、“先生が言ったから”で思考停止してはいけないと諌めていたのです。自分で考えて決断することこそが、人生を楽しく生きるために、何より大切なのですから」(泰伸さん)
こうした、自分自身の力で考える楽しさは、泰伸さんが主宰する『探究学舎』にしっかりと受け継がれている。次男の和政さん(40才)はベンチャー企業の役員となり、昌則さんはIT業界でCEOを務める。それぞれが自分たちの力で人生を切り開いた結果、父親がしていた子育て同様、見えないところで紆余曲折があっても、充実した生活を送っているという。
いま、無気力そうなわが子に「勉強しなさい」と毎日のように言い続けている自分自身に、はたしてこれでいいのかと疑問を感じながら、どうしていいのかわからないという親のあなたは、どうか1分1秒でも長く、子どもと同じ時間を楽しんで、同じ感動を共有してみてほしい。子どもが目をキラキラさせて、何かに好奇心を揺さぶられる姿を、きっと見られるはずだから。
(了。第1回から読む)
まんが/小出真朱 取材・文/角山祥道 取材/伏見友里 撮影/五十嵐美弥
※女性セブン2023年7月13日号