コロナ禍で一気に成長した、総菜や弁当などを持ち帰って食べる「中食」。多くの外食産業がデリバリーやテイクアウトをスタートさせて、消費者の選択の幅が広がるなど、市場は飛躍的に拡大。日本惣菜協会の調査によれば、2012年から2021年の10年で総菜の市場規模は約1.5兆円も増額。デリバリー市場も右肩上がりで売上を伸ばしている。
しかし、スーパーの惣菜や弁当に異物が混入していたという騒動もあり、その“安全性”が気になるという人も少なくないだろう。食品表示アドバイザーの垣田達哉さんは言う。
「店内で手作りしている場合は、その店舗がどれだけ清潔か否かにかかっています。テイクアウトを行う飲食店も同様で、安全面に関しては、個々の店の裏側を見ないとわからない。そのため、判断が難しくなる」
かつてスーパーや総菜店では、売れ残りの総菜の詰め直しや、揚げ直しのリパックが問題視されたこともある。だが「現在はそれほど行われていない」と食品ジャーナリストの郡司和夫さんは言う。
「昔はよく、精肉売り場の鶏肉の消費期限が切れかけると、店内でから揚げにして総菜や弁当売り場で販売されたものです。でも、わざわざ肉をカットして揚げると手間もお金もかかるので、いまでは行っているところはほとんどないのです」
一方で「刺し身の盛り合わせ」や「フルーツパック」に注意を促すのは垣田さんだ。
「午前中にさくで売られていた刺し身は、午後にカットされて、刺し身盛り合わせにリパックして販売されることが多い。小さくカットして、ちらし寿司に使われることもあります。売れ残った果物は、腐った部分を取り除いて、いろんな種類を詰め合わせます。よく見ると、工場で作られたカットフルーツと違って果物はバラバラ。鮮度がいいとは言えません」
総菜や弁当のリスクは異物混入や鮮度だけではない。
郡司さんは、総菜や弁当を食べ続けることで健康を損なう危険もあると警鐘を鳴らす。
「バックヤードなど店内で製造・調理されたものは原材料の表示義務がないので、店の努力次第です。3品以上で構成される加工食品にも、表示義務はありません。
例えば、刺し身の盛り合わせは生鮮食品ではなく加工食品に分類されるので、『中国産』のように消費者の手が伸びにくい刺し身を盛り合わせて、原産地を表示せずに売る手法が取られています。
添加物や食物アレルギー表示は法律で義務付けられていますが、スーパーなどではいい加減に記載されているところも多いのが現状です」
たしかに、コロッケやから揚げなどの総菜パックや、バーガーショップや中華料理店から持ち帰る商品には、原材料名の表示が見当たらないケースも多い。どこの食材がどう使われているか、私たちが知る術はないのだ。