今年3月、30年の歴史に幕を下ろした山村美紗サスペンスドラマ『赤い霊柩車』シリーズ(フジテレビ系)。1992年から30年以上続いた人気シリーズで、主役(片平なぎさ)と協力して事件を解決する狩矢(かりや)警部役を演じていたのが俳優・若林豪さんだ。正統派二枚目のダンディな俳優として、刑事ドラマや時代劇などで活躍。劇団「新国劇」の初舞台から様々な役を演じて60年、「この年になると、もう怖いものはない」という役者人生を振り返った。【前後編の後編。前編から読む】
「『赤い霊柩車』シリーズは30年やりましたから、ちょうどいい潮時だったんじゃないですか。作品の作り方が今はちょっと違ってきたんじゃないかと思うし、主役のなぎさちゃんが63歳 、神田(正輝)クンが72歳になっているのに、まだ結婚するの、しないのって無理がありますよ。私だって83歳。83歳の刑事部長なんていやしない。偉そうに部下に指図したりして、ときどきフッと恥ずかしくなることがありました。『年寄りは奥に引っ込んでろ!』ってね(笑)」
若林さん、なかなか毒舌だ。「正統派二枚目俳優」や落ち着いていて「ダンディ」なイメージが強かったが、目の前の若林さんは気さくな老紳士だった。
「もうこの年になると、怖いものなんてないですから何だって言える(笑)。俳優としては、十分やりきりました。以前は本を読みまくってはあれもやりたい、これもやりたい、と思っていましたが、80歳を越すとそのエネルギーがなくなって欲がなくなってきました。それが悔しいですが、身体は思うように動かないし、セリフ覚えも悪くなりましたから仕方がありません。以前は覚えよう、と思わなくても自然に頭に入ってきたぐらいなのにね。女性を見ても、『素敵だな!』と思うこともなくなったのも残念ですよ(笑)」
少し弱音を吐く若林さんだが、83歳となった今も現役の役者として舞台などに立っている。この2月には時代劇映画『仕掛人・藤枝梅安』第一作が公開になり、7月には朗読劇『声の花束』が控える。