コロナ禍以降、癒し効果のある観葉植物に関心が集まる一方、枯らしてしまう人も多い。ウェザーニュースが実施した「観葉植物を枯らしてしまった経験」についてのアンケート(2023年2月17〜18日実施、8836人回答)によると、ガーデニング経験者の約7割が「枯らした経験がある」という。そこで、樹医【*】の滝口肇さんに、観葉植物を育てる上でよくある失敗例と対策を聞いた。
【*/「樹医」とは、植物の不調の原因を突き止め、的確な処置やアドバイスを施す民間の資格(日本カルチャー協会が認定)で、街路樹や文化財樹木などの保全や治療を行う樹木医(日本緑化センターが認定)とは異なる】
「この植物は手入れが楽だから、誰でも育てられますよ」。そう言われて買った観葉植物が毎日せっせと水をあげても、どんどん弱るんです……。滝口さんにそう相談すると、「毎日水をやったら弱るのは当たり前です」と一蹴された。
滝口さんは、大学で微生物学を、国立の研究所で植物の遺伝子を研究した後に、樹医として起業した変わり種だ。
「研究所勤務時代に初めて観葉植物を育てたら面白くなって。退所後は園芸店で働きながら庭師に弟子入りし、実地でとことん植物を学びました」(滝口さん・以下同)
その過程で、本やネットに出ている情報が統一されていないこと、購入後のアフターサポートがなく、「枯れたら買い直す」を繰り返す人が多いことに違和感を持った。
「かかりつけ医のように、困ったら相談できる場所が街に1つでもあれば、枯れた原因がわからないまま買い直す人も減るだろうと、2019年から植物の訪問診療を始めました」
観葉植物を枯らす原因のほとんどは、冒頭の通り「水のやりすぎ」だそう。
「そもそも、観葉植物のほとんどは乾燥した環境が好き。土がカラカラに乾いてから2〜3日すると葉っぱが垂れてきますが、水をあげるとシャキッとする。そのくらいになるまで水やりをしなくても、植物は意外と復活できます。
店やネットでは『土が乾いたらたっぷり水をあげましょう』と言っていますよね? でも、『土が乾く』とは、正確にはどんな状態か、『たっぷり』とはどの程度の量なのか、正しく理解していますか?
店やネットの説明は抽象的なので、自己判断で間違えてしまう。そのため、科学的根拠をもとに、わかりやすい説明をするよう心がけています」
よく「植物に話しかけるといい」といわれるが、それこそ非科学的にも思えるが……。
「もちろん科学的根拠はありませんが、研究所時代の室長ですら、『よくわからないけど毎日挨拶をしないと植物がうまく育たない』と言っていましたから、あながち間違いとは言えないかも(笑い)。
それでも、毎日見て『乾いているな』『元気かな』と気にかけることが、上手に育てる秘訣なのは間違いありません」