もし、知らぬ間に我が家の周囲が撮影され、その動画が販売されたり拡散されていたら?……今どきはネットで撮影場所を特定し、その場所を訪問する様子を配信しようという人が出現する可能性があるので、気づいたら片手にスマホを持った実況者が連日、集まってくるかもしれない。いつの間にか自宅前がロケ地にされてしまった住人の戸惑いを、ライターの宮添優氏がレポートする。
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「実際やられると本当に気持ち悪いですよ。そのうち何か危険なことに巻き込まれるのではないか、そしてうちの近くで何やってんだという怒りがわきます。結局、そのモヤモヤは最後まで消えませんでした」
あるトラブルがきっかけで、つい最近引っ越したばかりだという、都内在住のアパレル関連会社経営・尾形佑さん(仮名・30代)。旧宅は古い分譲賃貸マンションだったが、オーナーの許可を得た上で好みの内装にリノベーション済みだったという思い入れのある我が家。週末は職場の仲間や旧友を招いてのホームパーティを幾度も開き、さらに結婚を考えている女性と同棲を始めた矢先のことだった。そこまで整えていた住処を出なければならなくなり、尾形さん自身、想像以上のダメージを受けたと訴える。
「借りていた部屋は角部屋で、すぐ横に非常階段がありました。そこで、違法なAV(アダルトビデオ)の撮影が行われていたんです。しかも、私の彼女はその連中とニアミスしていたようで、ふざけるなと思うと同時に、まさかうちの真横でこんなことが行われるなんて、と脱力し、同時に恐ろしくなりました。いろんな感情を整理できなくなり、引っ越すしかなかったというのが正直なところです」(尾形さん)
偶然にも、尾形さん宅を何度も訪れていた成人向けビジネスに明るい同僚が、件の動画を視聴したのがコトの発端だった。モザイク加工などが施されていない違法な動画をネットで見かけた友人は、背景に写り込む見覚えのある階段の作り、そこから望む景色が、尾形さん宅のマンション玄関からのものと同一だと気がついたのだという。
「最初は、これお前ん家だろ?って軽いノリで言われて、うわ、マジだ!って。そのときは、よく気がついたなあなんて強がっていましたが、どこにもぶつけようのない怒りというか焦りというか……もうあまり覚えてないほど頭に血が上りパニックになっていたと思います。すぐ彼女に連絡を取って、変なことは起きていないか、最近おかしなことはなかったかと聞きました」(尾形さん)
すると彼女は二ヶ月ほど前に、自宅前の廊下を行ったり来たりする中年男性と、女子高生に見える制服を着た女性の姿を目撃していたと無邪気に話したのである。実際、問題の映像にも、同じような姿の女性が出演していたから、疑惑は確信に変わった。階段は共有部分ではあるが、古いマンションのため外からの出入りが割と容易で、都心に近くセキュリティの甘い物件だと知って狙ったのかは不明だが、映像には階段横の自宅も映り込んでいてゾッとしたという。いうまでもなく、事前に撮影の連絡などはなく、その違法動画はネット上で今でも閲覧できる状態のままのようだ。